学問

ドンピシャ満開!・・・ラボ兼お花見

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平) 昨日は、ラボ・スペシャル(第32回)兼平居家花見であった。 ラボと花見を分けて開催するのが、日程的にも作業的にも厳しかったので、兼ねて我が家で開催することにしたのである。 ラボの…

ミランコビッチの本

東北新幹線に乗ると、各座席に『トランヴェール』という広報誌が置いてある。たいていは目を通す。年度末に息子と関西に行った時、往路は3月号で、北陸新幹線の敦賀延伸に関する特集だった。中に、「水月湖が語る過去、現在、未来の地球」と題して、福井県…

1から10より、0から1

先日の「照洋丸」(→その時の記事)に続き、今日も、我が家の沖に水産庁の漁業取締船がやって来た。「たつまい」(499t)だ。今日はずいぶん近いので、我が家の安物双眼鏡でも、水産庁のファンネルマークが容易に確認できたが、船の名前は分からず、例に…

一読『言語の本質』

最近私は、教科書に採録された文章の質の低さをたびたび問題にする。そんな愚痴めいた記事の一つに、今井むつみ「言葉は世界を切り分ける」を問題としたものがある(→こちら)。というわけで、今井むつみという心理学者には、心証甚だよろしくないものがあっ…

(史話)工業高校を増設せよ

日曜日に、市立図書館に行ったということを書いた。元々、私は図書館という場所をあまり使わない。私が必要とするような本を、たいていの図書館は置いていないし、本は手元にあって書き込みが出来ないと、何かを書いたり話したりする時の資料として機能しな…

「広い」と「正しい」

(2月28日付け「担任のお話」№36より②) 【電車が止まった!→学校に来る?or 来ない?】 木曜日に予定されていた考査が今週にずれ込んだのは誤算だった。たった10㎝余りの雪でも、電車が止まると高校は厳しい。朝8時の時点では、来た人だけ考査を実…

「さよなら ほやマン」への道・・・ラボ第31回

昨日は、ラボ第31回であった。予告通り、今回の講師は「さよなら ほやマン」の監督・庄司輝秋氏。演題は「『さよなら ほやマン』 映画制作の舞台裏から見た遅咲き映画監督の旅」。 なんと今回は、7年になんなんとするラボ史上初めて、1ヶ月前に満員御礼…

戸籍の文字は70万種!?!

(1月25日付け「担任のお話」№33より) 【(全部じゃないけど)見たぞ、M3課題研究発表会】 予定通り昨日の5~6校時、計測実習室で機械科3年生の課題研究発表会が行われた。発表したのは「鍛造班」「自転車・バイク班」「3D-CAD班」「資格取…

歴史に埋もれた「声」

西井麻里奈『広島 復興の戦後史 廃墟からの「声」と都市』(2020年、人文書院)という本を友人から借りて読んだ。今時としては珍しいくらい小さな活字で360頁あまり、文字がびっしりと並んでいる。数えてみれば、46字×21行、1頁に最大で966字…

ついに天文学!・・・記念すべきラボ第30回

昨日は、記念すべき第30回の「ラボ」であった。第1回を開いたのが2016年7月22日だから(→その時の記事)、途中、コロナによる中断が2年半あったとはいえ、既に7年。しかも、ずっと2ヶ月に1度というすさまじいペースで開催してきたのだから驚く…

子どもを大切に

(2023年12月14日「担任のお話」№29より②) 表面)12月6日付け石巻日々新聞より、「ダークマターって何もの ラボトーク参加者募集」を貼り付け。平居コメント)私の一般市民向け教養講座「ラボ」。一流の専門家の話は文句なしに面白いし、そう…

宇宙と数学(2)

次に「超越数」だ。超越数というのは聞き慣れない概念だが、「方程式の解にならない数」と定義される。ちなみに「方程式の解になる数」を代数的数と言う。言葉で定義するのは簡単だが、実際の数字を超越数であると証明するのは至難であったらしい。 超越数が…

宇宙と数学(1)

私は理科大好き人間なのだが、残念ながら、中学・高校時代から、数学という教科が甚だ苦手であった。勉強していてつまらないとは思わないし、物理は得意科目だったのに、なぜか数学がまったくできない(試験で点数が取れない)。そのため、大学では文系学部…

ニュージーランドの高校

この前の日曜日、ちょっとした事情で、ニュージーランドの高校関係者(日本人)とオンラインでお話をした。その中で印象に残ったことが3点あるので、紹介しておこう。 1:数学など、若干の必修科目はあるが、多くは選択科目である。好きなこと、得意なこと…

意識の上と下(和合亮一氏のことなど)

昨日、国語の秋季大会に行ったこと、私は今年役員であるが特に仕事と言うほどのことはしなかった、というようなことを書いた。実は、一つだけ少し大きな(らしい)お仕事をした。記念講演の謝辞を述べる係である。 通常は、宮城県高等学校国語教育研究会の副…

方言学はどこへ向かうか?

私は、11月2日が文化祭の代休だったので、4連休であった。しかし、それもあっという間におしまい。しかも、今日は、第6回宮城県高文連東部支部総合文化祭というのがあって、私も係の1人だったため、お仕事であった。東部支部というのは、多賀城、塩釜…

萩の複雑とミヤギノハギの怪

昨晩は、ラボの第29回であった。今回ご登場いただいたのは、地元石巻専修大学理工学部の教授・根本智行先生。演題は「秋の七草 萩の特徴と分類」であった。 萩はマメ科の植物である。宮城県民である私たちにとって、県花がミヤギノハギであるゆえに、とて…

『こころ』の「覚悟」

3年生の授業で、国語という教科における高校生活のハイライト、夏目漱石の『こころ』を読んでいる。2時間かけて通読しても、生徒はほとんど何も憶えていないし、ポイントを絞らなければ考えるということもない。少しずつ読んでも、自ら先を読み進めような…

詞書の問題

最後に「詞書(ことばがき)」の問題に触れる。 詞書とは、短歌の前に書かれている作歌事情を説明した部分である。岩澤先生が引いている『万葉集』の大伴旅人の歌で具体的に見てみよう。 a 大宰帥大伴卿(だざいのそちおおとものまえつきみ) 酒を讃むる歌…

文語か口語か?(2)

前回引用した高村光太郎の記述は、詩についてであって短歌についてではなかった。短歌は詩の一部とは言え、本当に同一に扱ってよいかどうかについては、慎重でなければならないだろう。 前回も書いた通り、光太郎は与謝野鉄幹に師事して短歌を作り始めた。1…

文語か口語か?(1)

岩澤先生は著書の中で、短歌の定型性だけでなく、用語と仮名遣い、詞書といった問題についても考察している。定型性について基本的に意見が一致していた私も、こちらはそうはいかない。 まずは用語と仮名遣い、すなわち、文語か口語か、歴史的仮名遣いか現代…

短歌における定型性(補)

先週東京に行った時(→その時の記事)、行きの新幹線では、岡崎先生の『歌で革命に挑んだ男』を読み直し、帰りの「ひたち」では、岩澤謙輔『短歌よ定型に還れ!』(夏目書房、2000年)という本を読んでいた。特に復路。何にも邪魔されない4時間半はとて…

とてもぜいたくな1日半(後)

演奏会場から出る時、主催者から「平居さん、打ち上げ来ますよね」と声を掛けられた。「え、明日もあるのに打ち上げですか?」と答えると、「メシですよ」と言われた。 のこのこ付いて行ったのは、ミシュランで星こそないものの、「ビブグルマン(価格以上の…

「思考の肺活量」禍

まったく突然、秋になった。先週の木曜日に気温が急降下したと思ったら、土曜日には湿度も下がり、本当に爽やかな秋になった。1週間前には真夏日で、夜も熱帯夜に近かったのに、昨日の石巻は、最低気温が14.3℃で、平年(15.4℃)さえも下回ったのだ…

意味は後から決まる

(2023年9月22日「担任のお話」№20より) 冒頭に9月21日付け「河北春秋」(河北新報のコラム)を貼り付け。以下、それを受けての文章。 そうそう、昨日は宮澤賢治の命日であった。毎年必ずこの日には、花巻市の「雨ニモ負ケズ」碑の前で、賢治祭…

中国音楽研究会のこと(5)

そもそも、「中国音楽研究会のこと(2)」で紹介した通り、中音研は、発足当初の目的として「中国の歌を唱い日本全国に広める努力」をすることを定めていた。すると、最初から目指していたのは「歌う会」ではなく、「合唱団」だったということになる。 それ…

中国音楽研究会のこと(4)

5年ほど前に、私は中国音楽研究会という組織について3回連載の一文を書いた(→こちら=今回の記事に直接関係する連載第2回)。中国音楽研究会は、『新中國の音楽』(飯塚書店、1956年)という本の編者で、名前から想像すると学術団体なのだが、どうし…

人の心が変わる瞬間・・・ラボ第28回より

8月も下旬に入ったが、めちゃくちゃに暑い。日中の30℃も、石巻としてはさほど当たり前ではないのだが、夜中に気温が下がらないことの異常さと来たらない。今年の真夏日は既に25日、熱帯夜も15日に及ぶ。どちらも過去の記録(真夏日21日、熱帯夜5日…

「13位ショック」も同じ話

一昨日の新聞報道によれば、注目度が高い科学論文数(他の論文に引用された回数が各分野で上位10%に入る論文の数)で、日本は過去最低の13位に転落した。日本の上には韓国やイランなどといった国も入っている。資源を持たない国にとって、知的水準の低…

日本における「黄河」の記録(2)

⑤の神戸での演奏会について、私は外山雄三氏にインタビューを申し込んで、まったく相手にされなかったという話は一昨日書いた通りである。 神戸労音は「しらべ」という機関誌(「機関紙」と印刷されているが、冊子である)を毎月発行していた。演奏会は「例…