学問

金子みすゞの娘!?

先週の土曜日(11月19日)、毎日新聞で上村ふさえという人の訃報を目にした。95歳で亡くなっている。全然知らない名前なのだが、「童謡詩人・金子みすゞの長女」という言葉が目に入った。えっ!?金子みすゞって結婚してたんだっけか?私は軽く驚いた。…

100年で「古典」?

先日、「古典」とは何か?みたいな話を書いた(→こちら)。その話を国語の秋季大会という所でした時、分科会がすっかり終わってから、某氏が私の所に来て、「平居さんは、何年経てば古典と評価していいと思いますか?」と尋ねた。私は、「作者が死んでから1…

この作品はなぜ「古典」になれたのか?

国語の秋季大会に関する様々な話は抜きにして、古典分科会で私が話したことの中心部分だけを書いておくことにする。(微修正あり。文章体で。) 私にとっては当たり前のことが、人にとっては当たり前でないと感じることがよくある。学校でカリキュラムについ…

山本周五郎と『樅の木は残った』

(今日は文化祭の代休。昨日の続き。) 「樅の木」の足下に、山本周五郎の文学碑がある。字は夫人の手によるものらしい。 「雪はしだいに激しくなり、樅の木の枝が白くなった。空に向かって伸びているその枝々は、いま雪を衣て凜と力づよく、昏れかかる光の…

とりあえず復活!ラボ

昨日は、ラボ・トーク・セッション第23回を開催した。なんと、2020年2月以来、約2年半ぶりである(→前回の記事)。 2020年4月に第23回を開催する予定で、講師も決まり、チラシも作って宣伝を始めていた矢先、コロナ対策による全国一斉休校と…

新習近平体制について

第20回中国共産党大会が終わった。周知のとおり、習近平がほぼ独裁体制を確立させた。総書記が最も強い力を持つのは当然だが、その最も近くにいて、大きな権限を持つのが政治局常務委員会の6人である。習近平は、それを完全にイエスマンで固めたという。…

志賀直哉の「身勝手」

志賀直哉の「城の崎にて」について2回書く、と書いて、実際に「逆接」「晦渋」と書いたのだが、蛇足ながら3回目を書く。 「城の崎にて」は、総論的な段落の後に、蜂、ねずみ、いもりといった生き物に関する段落を置き、それぞれのなかで生死の問題を少しず…

志賀直哉の「晦渋」

「城の崎にて」で、私が最も分かりにくいと感じるのは、のどに串を刺されたネズミが逃げ回っているのを見て、死に至るまでの苦しみ、死ぬまで生きるために必死の活動をしなければならないことへの恐怖について語る段落の最後の部分である。 「またそれが今来…

志賀直哉の「逆接」

志賀直哉(1883~1971年)、特に「城の崎にて」について思うところを書く(おそらく2回連載)。「論」というほどのものではない。授業に関わる、いわば実務的なことである。 志賀直哉は決して評価の低い作家ではない。なにより、死後半世紀を経て、…

「還暦」考(2)

さて、中国語に「還暦」という言葉がないようなので、『日本国語大辞典』(新版)を引いてみた。すると、「還暦」の出典として書かれている最も古い文献は、『音訓新聞字引』(1876年)である。この本は、国立国会図書館の「デジタルコレクション」で実…

「還暦」考(1)

今日は私の誕生日。なんと「還暦」である。紆余曲折ありながらも、なんとかこの歳まで人並みの社会生活ができているのはありがたいと思いつつ、この10年ほど、歳を取るのはなんとなく愉快でない。それに従って心身が衰えるだけでなく、社会的制約も大きく…

宇宙とダークマターと命と神

有名な話、「文明は人間を堕落させる」は、30年来の私の口癖である。とにかく、便利なもの、楽をさせてくれるものに対しては、敵意にも近い疑いの目を向けている。便利や楽と引き替えに、人間は固有の能力を退化させていく。 そんな私も、実は、テレビを見…

東洋文庫と仙台フィル第355回定期

昨日は、午前中に多賀城市の東北歴史博物館(歴博)へ行き、午後は、仙台フィルの第355回定期演奏会に行った。 歴博の特別展は「知の大冒険 ― 東洋文庫 名品の煌めき ― 」。東洋文庫とは、東京にある民営の東洋学文献センター(図書館兼博物館)である。…

権力の性質(毛沢東とプーチン)

まとめに入る。 毛は比類のない軍事戦略的能力のゆえに、中国共産党の指導権を握った。抗日戦争→解放戦争(国共内戦)を終えて、新しい国家の建設に入ると、することは大きく変わる。軍事的な戦略能力が、新国家の建設・運営に通用するとは限らない。しかし…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その6

権力者としての毛沢東を見ていて思うのは、「自分が正しい」という独善(もしくは、絶対の自信)と、国民の命の軽視である。 前者は、戦時中に様々な戦略的意志決定を行ってきた延長線上にある。トップの人間が、「このやり方で行く」となれば、そこに迷いを…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その5

第7回党大会で、指導権を完全に掌握した毛沢東は、その後も戦略家としての類い希なる才能を発揮し、国民党に対しても勝利を収めた。 問題は1949年10月5日の建国後である。共産党が連続した組織である都合で、毛の権力は新国家においても継承された。…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その4

毛沢東が言うように、戦争では、常に臨機応変の迅速な判断が求められる。しかも、戦略能力というのは天賦の才能であるようだ。凡人が何人もで会議を開くのではなく、天才が一人で即断即決するのでなければ、勝ちは望めない。そんな中で、毛に権力を集中させ…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その3

紅四軍において指導権を掌握した毛沢東は、その指導権を強化するため、1930年12月に富田事件を起こした。党内に反革命組織がいるというタテマエの下、多くの党員を逮捕、処刑したと言われる。いかにも、紅四軍内での指導権を握ったことによって、仮面…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その2

これらの方針の徹底として、毛は軍内に兵士委員会という組織を作った。これは大きな権限を持つ組織である。将校は、兵士委員会の監督を受けなければならなかった。将校が間違ったことをすれば、兵士委員会が制裁を加えることさえできたのである。 これらの民…

権力の性質(毛沢東の場合)・・・その1

昨今の不穏な情勢を見ていて、なぜこれほど滅茶苦茶な人間が権力者の地位に就くのであろうかと思う。一方で、私の専門である中国の現代史を見てみれば、プーチンに勝るとも劣らない専横の大御所・毛沢東がいる。私は昨年、毛沢東の権力掌握過程の初期につい…

斎藤幸平『人新世の「資本論」』

この2日間、職場の同僚に勧められて斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)という本を読んでいた。これはびっくり。環境問題がいかに深刻な人類的課題であるかから始まって、資本主義が環境問題克服と絶対に矛盾する理由、それを克服す…

小林秀雄について(5)

普通に考えれば、前の小林の発言は、「開き直り」と言えるだろう。小林が戦時中大陸を訪ねた時に書いた文章は、決して戦争を美化するとか、侵略行為を正当化するとかいったものではないが、文学報国会の役員となったことや、その立場で、おそらくは戦意高揚…

小林秀雄について(4)

(3)を書いた時、私は「本居宣長」を用いて、小林が宣長を借りてどのように自己表現をしたか、ということを書きつなぐつもりだった。ところが、ふと「歴史」に寄り道してみようかという気持ちが兆した。 小林秀雄の歴史認識に関して論じた多くの文章の中で…

小林秀雄について(3)

前回書いたような、自分が生活体験の中からつかみ出した見解だけが信じるに値するという考え方は、自ずから抽象性を否定し、実感的、具体的な方向を指向するようになる。例えば、何かにつけて問題とされる次の一節。 「美しい『花』がある、『花』の美しさと…

小林秀雄について(2)

『本居宣長』は、たいへん立派な作りの重い本だ。箱から取り出すと、手触りがよく、目の粗い濃紺の木綿の布に金文字でタイトルと著者名が書かれている。副題が付いていないことで、なお一層風格が感じられる。表紙を開くと、見返しに奥村土牛の手になる山桜…

小林秀雄について(1)

最近、新聞の書評欄で見付けて浜崎洋介『小林秀雄の『人生』論』(NHK出版新書)という本を読んだ。実は、私にとって小林秀雄は中国近代史、明代思想史(陽明学)、高村光太郎、音楽史あたりに続く「第5専門」と言ってよい分野なのである。目に止まった…

方言の消滅

最近、古典の授業で定番『源氏物語』の「小柴垣のもとで」(若紫の巻)を読んでいる。中に、「髪ゆるるかにいと長く、めやすき人なめり」という一節がある。小柴垣の隙間から家の中をのぞき見する光源氏が、そこにいる1人の女房を評する場面だ。 「めやすし…

陰にウォーレス・ブロッカー氏

(10月15日付け「学年主任だより№21」より①) ノーベルウィークが終わった(裏面に10月12日付け朝日新聞「科学」欄貼り付け。見出し「今年のノーベル3賞振り返る」)。物理学賞を受賞した真鍋叔郎さんが元日本人だということで、報道は真鍋さんに…

イグ・ノーベル賞と津軽弁

書かずにいたが、9月24日に「学年主任だより 号外」を出した。8月25日にプレゼンテーション講話に来ていただいたS先生に、その後生徒から出された質問を抜き書きしてお送りしたところ、丁寧な回答を下さった。ほどよいレイアウトに整理して、分量がB…

ある論文の数奇な運命

今年の1月17日、東京の某大学の知らない先生から勤務先に電話がかかってきた。「縁のある中国人からの依頼で電話をしているのだが、あなたが5年前に書いた論文を中国語に翻訳して、中国・内蒙古師範大学の紀要に掲載したいのだが、了承してもらえるか?…