日本空中電線撲滅協会



 昨日は支部総体2日目。午前中は、書道愛好会他の生徒と共に、水産高校のグランドで行われたラグビーの試合を応援したところ、石巻高校相手に26対17で勝利した。団体戦で水産高校が勝つ瞬間を見たのは、水産高校勤務になってから初めてかも知れない。決して勝たせてもらった試合ではない。花園予選こそが本番、県総体には全ての学校が出られるとあって、支部総体などほとんど練習試合に近い位置付けなのであるが、そうとは思えないほど見応えのあるいい試合であった。感激した。

 午後、少し時間に余裕があったので、水産高校の美女3名を誘って、学校から車で10分ほどの蛤浜(はまぐりはま)という所にある、「はまぐり堂」という喫茶店(店では「Cafe」と称している)に行った。オーナーは、今春、若干31歳にして宮水を退職してしまった食品科学類型のK先生である。若くして退職したと言えば、適性に問題があったとか、今の学校の管理的体質に嫌気がさしたとか、そんな想像をしてしまうが、K先生の場合はそうではない。将来はぜひ宮水の校長に、という現場の先生も多かった、若いながらも良識と熱意と根性にあふれた敬愛すべき先生であった。震災をきっかけに自分自身の生活が激変した上、自分の愛した浜が寂れていくのを見るに堪えず、牡鹿半島の浜の再生のために教員を辞めて立ち上がったのである。彼の夢を聞くのは楽しい。一切がリセットされ、全国から注目が集まる今だからこそ出来ることが多い、確かにそんな気になる。かろうじて残ったK先生の自宅を改装して古民家風の喫茶店とし、裏の家を買い取って、現在は宿泊施設として整備中である。

 震災2周年の今年3月11日にオープン。土日祝のみの営業を続けてきたが、昨日からは平日も営業するようになった(10:30〜17:00 定休日は火水)。平日営業の初日で、ほとんど人も来ない中、美女に囲まれ、のんびりとコーヒーを飲みながら穏やかな時を過ごした。

 ところで、斜面に建つ「はまぐり堂」は、海から50メートルくらいしか離れていないにもかかわらず、目の前にもう一軒の生き残った家が建っていて、海が見えない。一番南の角にある外向きカウンターと、外のテラス席だけは海が見える。ところが、目の前には数本の電線が横切っていて、必ずしも開放感を感じることが出来るわけではない。日本では当然のことだ。私はどうしてもこれを「当然」と受け入れることの出来ない数少ない(?)日本人で、以前からことあるごとに、これが日本人の美意識の低さを象徴する、と罵倒してきた。このブログの中でも、3個所や4個所は見つけられるだろう。勢い余って、『それゆけ、水産高校!』に自称「日本空中電線撲滅協会会長」と書いたところ、それを読んだ卒業生の母親が、自分も会員にして欲しいとわざわざお手紙を下さったりして恐れ入ったが、なかなか多数派への道は遠い。

 私が、「やっぱり日本だねぇ、この電線どうにかできないの?」と言うと、K先生は「本当にそうなんですよ。平居先生ぜひ何とかして下さい」と言う。心の中で「これで会員が一人増えたな」とは喜んだものの、私に出来ることは、残念ながらない。あちらこちらでグチをこぼして歩くのが関の山である。

 あの牡鹿半島の美しい小さな浜に、何の障害があるわけでもないのに、むやみに電信柱を立て、縦横に電線を張り巡らせて平気な感性が、私には全く理解できない。先日の歩道橋の話と重なり合うが、ヨーロッパ人なら絶対にこんなバカなことはしない(旧東欧は少し危ない。東ドイツの路上配管など、信じ難いものがあったりする)。電気が通じることだけが価値で、そのための施設がどのような形態をしていようと、文句のあろう訳がない・・・こんな貧しい価値観から脱却できない限り、日本はいつまで経っても非文明国であり、精神的発展途上国である。