干潟の生物救出大作戦



 万石浦の防潮堤工事については、何度かグチめいた記事を書いた。この際、継続的にレポートしておこうと思う。もっとも、そんな気になったのは、単なる憤りからではない。杭のようなもの(矢板と言うらしい)が打ち込まれたら、その瞬間に全て終わり、と思っていたところ、必ずしもそういうわけではないらしい上、栽培漁業類型の先生方と増殖研究部の諸君は、壊されていく生態系とそこに住む生物を、少しでも多く救助すべく奮闘しているようなので、世間の人々にその様子を知ってもらいたいという気持ちが生じてきたからである。

 今朝、宮水校内の掲示板に、M先生が、以下のような書き込みをしておられた。

「防潮堤工事が進み,矢板で実習海面が分断されてしまいました。閉ざされたところにはまだ海水があり,石垣や2年前に投入された石にはフジツボ,マガキ,カイメンなどが付着しており,小型の巻き貝やフナムシ,イソガニ,スジエビなどが動き回っています。

そこは近々採石が投入され埋められることから,少しでもそこに住んでいる生物を残そうと増研部員と一緒に救出作戦を実行しました。イシダタミガイ(小型巻き貝)は1000個体以上,ヤドカリなど採集しましたが,近くに放流する場所がないので,実習場の大型コンクリート水槽に造ったミニ万石浦に仮収容しました。時期を見て,万石浦内の黒島などよく似た環境のところに放流する予定です。

回収できなかったカキやフジツボはそのまま採石の下になります。震災により地盤沈下した万石浦では,干潟がほとんどなくなり,実習場前でもコメツキガニやアラムシロガイなどの小動物が姿を消していますが,矢板工事でまた大きな変化が起きます。実習海面は,岸辺に残されたちっぽけな干潟でしたが底生生物のリフュージア(避難場所)として確実に機能し,生物多様性の維持に貢献していたはずですが・・・」

 今日は、実習場に足を運ぶ余裕が無かったが、写真で見ると、生徒たちが「ミニ万石浦」を作り、生き物の救助に努力している姿は、涙を催すほどに健気だ。生き物たちは言葉を発しないけれど、きっと感謝しているに違いない。