運命を分けたゴールキックとペナルティキック



 父子家庭をしていた昨日は、子守も兼ねて、県サッカー場に宮水のラグビーの試合(花園予選)を見に行った。対戦相手は、県総体で惜敗した利府高校である。

 いやぁ、実にすばらしい試合を見せてもらった。これほど手に汗握ってスポーツの試合を見たのは、久しぶりである。結果は、14対12で宮水が雪辱を果たしたのだが、知らない学校の試合だったとしても興奮しながら見たのではないかと思う。それほど実力伯仲したチーム同志の、ひたむきな試合であった。

 宮水が2本目のトライを決めた時、ゴールキックは、角度の浅い難しいものであった。2年生のKが蹴った。ボールはギリギリのところで、バーに当たって入った。試合終了の数秒前、宮水が反則を取られた。利府高校ペナルティキックを選択した。この時、点差は2点だったので、入れば1点差で逆転ということになる。その場合、宮水が反撃する時間は明らかに残っておらず、利府高校の勝利は間違いなかった。しかし、このペナルティキックも角度が浅く難しい。ただ、誰にも邪魔されずにプレー(キック)ができ、入りさえすれば逆転勝ちということで、利府高校はキックを選んだのだ。正に運命を分けるキックだった。結果は、もちろん利府がキックを外し、受け止めたボールを宮水がタッチラインの外へ蹴り出した瞬間、ノーサイドの笛が鳴った。

 強い方が勝つのではなく、勝った方が強いのだ。勝敗を分けたのは、もちろん全てのプレーなのだが、やっぱり私には、あの角度の浅いキックを入れたかどうかだったような気がする。そして、そこには、単に強いか弱いかだけではない、「運」というものもあったような気がしてならない。

 話は変わるが、楽天イーグルスの田中投手が、連勝記録を伸ばし続けている。神がかり的だな、とさえ思う。しかし、この連勝の間、田中の防御率はゼロではない。1点台の半ばであろう。つまり、1試合平均で、1〜2点は取られているのである。相手を0点に抑えれば、絶対に負けはつかない。1点に抑えても、身方が1点も取れなければ負けはつく。自責点がゼロでも、味方のエラー等による失点があれば負けはつく。こう思うと、田中の20(シーズンを跨ぎ24)連勝は、実力だけによるのではない。特にパリーグの場合、投手がバッターボックスに入ることはないのだから、完封した上で、自分のホームランで勝つ、ということも起こらない。守備を別にしても、野手の働き(得点)が絶対に必要なのである。

 先週の金曜日の試合は、3対2で完投勝ちしたが、田中は先に2点取られた。最初に楽天が3点取ったなら、2点までならいいや、と思いながら投げることもできるので、2点取られたことにあまり意味は無いが、先に取られた2点は重大である。そこから先、自分がいくら頑張っても、野手が得点してくれなければ負けはつくからである。明らかに、田中の実力とばかりは言えない。田中の20(24)連勝は、本人の実力+野手の力+運であり、そのどれが欠けても実現しなかったものだ。

 宮水は実力もあったが、運もあった。「運も実力のうち」と言うが、実力がそうそう変動するはずがないのと同様に、運もまた、ある人には常にある、無い人には無い、という性質を持つという気がする。しかし、俺には「運」があると思っても、次に「運」があるかどうかはやはり不安なものだ。だからこそ、プレーが緊張感を持ち、見る者を興奮させるのだ。次の試合は、10月17日、県大会17連覇中の仙台育英が相手である。県大会で向かうところ敵無しの育英だが、全国大会ではあまり勝てないチームである。健闘を楽しみにしよう。