弁護士会の謎



 今日は学級通信を出したけれど、1月20日のこのブログの記事の焼き直しが大きなスペースを占めているし、その他も、事務に近い話題だったので、ここに特に載せるほどの記事がない。ちなみに裏面は、昨日の『読売新聞』からスキャナー「賃上げ前提 異例春闘〜ベア獲得労組攻勢」を引用。コメントは、「間もなく諸君にとっても、こんなことが切実・重要な問題になる。「春闘」や「ベア」「定昇」くらいの言葉は知っておいた方がいい」。


 さて、全然関係ない話。

 弁護士になると「弁護士会」というものに入る義務が生じる、或いは、「弁護士会」に入らなければ弁護士としての業務ができない、ということは知っていた(同様の組織に「税理士会」がある)。どうしてこれが「義務」なのかな?という疑問は感じたが、自分にとって切実な問題ではないので、あまり真面目に考えたことはなかった。

 日曜日の『朝日新聞』県内版を見ていて、自治体が採用した法曹資格を持つ公務員が、住民の法律相談に応じることが、「弁護士会」に入るかどうかということとの関係で問題になっていることを知り、「弁護士会」に関する疑問がにわかに強くなった。

 その記事によれば、法曹資格を持つ人が公務員になって、住民の法律相談に応じた場合、「弁護士会」に入っていなければ、弁護士でない人が報酬目的で法律事務を行う事(非弁活動)を禁じている弁護士法第72条に触れる可能性があるのだそうだ。私が更に驚いたのは、宮城県富谷町に採用された元弁護士Sさん(29歳)の年収が480万円で、「弁護士会」の会費は月51600円だということだった。高度な専門職であるはずの法曹有資格者が、いかに20歳代とは言え、年収500万円に満たないというのも気の毒だし、「弁護士会」の会費の高額にも驚く。逆に言えば、本当は、弁護士というのは、月に5万円以上の会費を払うことが苦にならないくらい高収入な職業だ、ということであろう。

 「弁護士会」が何ぞや、ということは、一般市民には非常に分かりにくい。弁護士法によれば、「弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする」(第31条)とある。弁護士会のホームページなどを見てみると、市民に対する相談会の開催といった社会活動もしているようなので、これだけというわけでもないようだが、法律条文を見る限りはひどく他愛もない。第33条には、会則に盛り込まなければならない事項も指定されているが、抽象的すぎて分かりにくい。ただ、どうしても入会を法律で義務化し、月5万円以上の会費を納めなければならない組織には見えない。ちなみに、仙台弁護士会には412人の会員がいるらしい。会費が一定なのか、年齢や所属年数による違いがあるのかは分からないが、一律5万円だとしても、月に2000万円(年に2億5千万円)以上の収入があることになる。よほど大々的に事業を展開しているのでなければ、これは異常な金額だ。

 法律の専門家達が当事者でありながら、加入義務についても、会費についても、今まで文句を聞いたことがないわけだから、一般市民には窺い知ることのできない合理性と業務があるのだろう。私が書いているのは文句ではなく、素朴な疑問である。

 富谷町は、問題なく業務を行ってもらうため、弁護士会への登録費用や会費として、職員の給与を月77000円引き上げる条例改正案を議会にかけたが、一部議員から「個人的支出になぜ税金を使うのか」という疑問が出され、条例案は7対11で否決された。町から報酬を得ているから、Sさんの法律相談が「非弁活動」に当たるという問題が生じるのであり、それを回避するために弁護士会への登録が必要だとなったとすれば、その会費が「個人的支出」だというのはまったく理屈の立たない話である(「給与」に含ませるのではなく、業務経費として町が支払えばいいのかな?)。しかし、それは私がここで批判するような問題ではない。

 Sさんは、結局、自腹で再加入したそうである。トラブルを避けるためにはやむを得なかったのだろう。年収500万円に満たない人に、年60万円以上の会費支出は厳しい。この現実を前に、「弁護士会」って一体何だろう?という疑問は、ますます大きくなるのであった。