網地島・・・美しき日曜日


 今日は子守の一日。何をしようかと思い、天気もひどくよさそうなので、網地島あじしま)に行くことにした。網地島石巻沖に浮かぶ離島で、日々我が家から見えているのであるが、前任校の仙台一高にはかつて「網地島巡検」という名物行事があった都合で、その引率で2度ほど訪ねたことがあるだけだ。網地島へ行く船の発着場所は、我が家から歩いて10分の門脇(かどのわき)桟橋。時刻表を見てみると、9時発の船に乗り、16:46着の船で帰ってくると、滞在時間は4時間40分。程よい遠足である。網地島北西端の集落・網地で船を下り、直線距離で5キロある網地島の南東端・ドワメキ崎まで島を縦断し、その近くにある長渡(ふたわたし)の港周辺で少し水遊びをさせ、そこから船で石巻に戻る、というおよその計画を立てた。

 船はとても混んでいた。この船は、猫で有名な田代島を経由して、網地島に渡るのだが、日曜日の客の大半は、私達と同じような日帰り行楽客らしい。釣り竿を持っている人もいる。門脇桟橋を出ると間もなく、船にウミネコがたくさん寄ってくる。みんな心得たもので、えびせんその他のスナック菓子を与える。投げれば空中で上手くキャッチするし、手を思い切り伸ばしていれば、直接餌を持って行く。私は餌やりの楽しさよりは、ウミネコに見とれていた。なんというスマートかつ合理的な体型で、美しく、悠然と飛行するものか、と思う。

 予報どおりの好天で、海はすこぶる美しい。特に、島の海岸線が間近に見えるようになると、吸い込まれるようなエメラルドグリーンである。かつて「網地島巡検」で訪ねた時に、理科の教員から、暖流の中に浮かぶ網地島は温暖で、植生も石巻や仙台と違って照葉樹林だ、という話を聞いたことがある。既に新緑の季節は終わったが、紫外線が強いためか、葉っぱの色がとても鮮やかだ。

 網地で船を下りると、予定通り、網地島縦貫道路を歩き始めた。石巻でも真夏日が予想されていた今日、ほとんど日陰のない舗装道路はなかなか大変だったが、子どもたち(小4と保育所の年長組)は石蹴りをしたり、後から後から飛んで来る蝶や道端の生き物を観察したりしながら、なんとか歩ききってくれた。ほぼ中間点である網小医院裏のベンチで10分間休憩を取り、2時間弱でドワメキ崎(涛波岐埼)に着いた。金華山と太平洋を望むこの岬の風景は豪壮である。正に果てしない海が眼前に広がり、地球の丸さを実感することができる。船は混んでいたし、私達のように2時間歩く以外に来る方法がない場所でもないのに、この贅沢な風景の広がる岬まで来る人は誰もいない。私達は3人で、地球の100分の1くらいを独占しているような気分でおにぎりを食べた。

 子どもたちは水遊びがしたくてしたがないので、早々、長渡の港に向かった。砂浜があるわけではないし、真水があるわけでもないので、膝から下だけの水遊びであるが、それでも子どもは大喜びだった。磯のような所が少しあって、小さなヒトデとたくさんのヤドカリを見付けて盛り上がった。小さな小さなカニもいた。その後は「水切り」である。波に浸食された理想的に平べったい石が無限に落ちているので、なかなかやりがいのある「水切り」であった。

 14:41の船に乗る。来る時は「ブルーライナー」という小型の客船、帰りは「マーメイド」というフェリーである。「マーメイド」の方が少し遅いが、客席の前方、舳先の方に出ることができるので、景色を見ながら船に乗るにはこちらの方がいい。いつも、北上川の河口を出入りする網地島航路の船を見ながら、のどかでいいなあ、と思っているのだが、今日は自分が乗客。北上川に入り、日和大橋の下をくぐり、日和山が目の前に迫ってくるのは感動的だった。いつもの町がひどく新鮮に見えた。

 海の風景の美しさを堪能した1日だった。

 ところで、我が家はデジタル禁止。ゲーム機なんてもってのほか。勉強するにしても、タブレット端末による「効率のよい」学習なんてあり得ない。しかし、それらを貫くためには、それに代わる何かを用意すること、時間を割いて彼らに付き合うことも大切だ。その何かが、今日に関しては「網地島遠足」だった。子どもは大喜び。次は25年ほど行ったことのない田代島だな・・・。