リニア新幹線とカジノ法案



 リニア新幹線の建設に認可が出た、というニュースが流れたのは、金曜日のことである。同じ時期、カジノ法案についての議論が本格化したとかで、こちらもあちらこちらでの報道を目にした。リニア新幹線に関しては、JR東海が環境影響評価書を提出してからわずか半年、カジノ法案については、全国でいくつもの自治体が、法が成立した時にカジノを建設する場所として名乗りを上げている、という報道も多く目にした。

 先日私は、自民党という政党は「金が全て」であり、それは日本人の気質の反映でもある、というようなことを書いたのだが(→こちら)、早速にして、正にそれらを地で行くような決定であり、法案の提出・審議・反響である。

 リニア新幹線については、私がごたごた書くまでもなく、消費電力の大きさ(従来型新幹線の3〜4倍?)、工事が環境に与える影響(地下水、ウラン鉱、膨大な残土とそれを処理するためにでっち上げられたかのような道路建設計画・・・)、人口減少と合わせて考えた時の有効性への懸念など、多くの問題が指摘されている。以前から言うとおり、私は旅行(移動)を「線」と考えている人間なので(→こちらこちら)、トンネルの中ばかり走って、東京から名古屋まで40分で行けるということには何の魅力も感じないし、むしろ滅入ってくるばかりなのだが、それが果たして、「感傷」とか「個人的な好みの問題」と言って済ませられる問題なのかどうか・・・?列車の構造や建設に関わる問題だけではなく、「灰色の男たち」に時間を奪われる世界に溜まってくる「無理」は、必ずや深刻な害を生むだろう。

 カジノについては、パチンコのように日本の津々浦々まで浸透することを可能性として含んでいるのかどうかは知らない。だが、そもそも、海外からの観光客への期待も含めて、利益を得るために、ギャンブルという方法を使うこと自体の卑しさと、そのような発想を持つ社会の子供への悪影響を考えると、政府が旗を振ってやるようなことには到底思えない。1〜2ヶ月ほど前に、厚労省の統計で、日本でギャンブル依存症にかかっている人が536万人にも上るという報道が、大々的に為されたばかりである。まったく異常な社会だ。今やらなければならないのは、地道に汗を流して働き、収入を得ることの尊さを社会全体の共通認識にすべきことであって、もうかるからと言って、ギャンブルを野放しにすることではない。

 私が口癖のように言っていることの一つに、「真偽と損得は矛盾する」という言葉(法則)がある(→こちらこちら)。もう少し丁寧に言えば、「真偽と目前の損得は矛盾する」が正しい。多分私のオリジナルだと思うが、なかなか立派な口癖であると自賛している。もちろん、世の中のあらゆることに当てはまるわけではなく、例外はあるだろうけれど、もうかる話は、目前の利益を生むには違いないが、少し遠い将来に更に大きなダメージをもたらす。今やろうとしていることと目前の利益の因果関係は明瞭だが、将来引き起こされた問題との因果関係は明瞭でないため、なおのこと話は魅力的に見えてしまう。「利益」は「金」だけではない。「便利」も「快適」も「利益」である。本当に正しいことは、「利益」とは縁がないと覚悟した方がよい。「正しい」をただの観念だと笑ってはいけない。「正しい」は最終的に、人類の生存を意味する。二酸化炭素と同じで、ツケは気付かないままにどんどん大きくなる。