蔵王の火山活動・余波



 のんびりした3連休を過ごした。と言うのも、本来であれば、昨日今日は、前任校の山岳部生徒を引率して、蔵王山刈田峠から約1キロの井戸沢小屋という所まで行く予定であったが、それが中止になったからである。平地でも風が強く、仙台でも少し雪が積もったし、いかにも吹雪いていそうな雲が蔵王をすっぽり包み込んでいたので、山へ行っていたら大変な目に遭っただろう。やれやれ、助かった。

 もっとも、中止の原因は荒天ではない。「噴火」だ。10月9日に「お釜」の白濁が確認されると、気象庁蔵王に関する初めての「解説情報」を出した。11月19日には過去最長の火山性微動、12月19日には、少し大きな火山性微動が観測されるとともに、山形県側の傾斜計が、傾斜の変化を記録した。これらの直前、9月27日に御嶽山が噴火し、多くの犠牲者が出たことの印象は強烈だ。

 こう書いてくると、非常に事態は切迫しているようだが、実はそうとも言えない。火山性微動の強さも回数もさほどではなく、スキー場閉鎖の話も出ていない。白濁は15分ほどで消えたらしいし、火山性微動の類も、観測精度が上がったことによって問題となった、という程度に思われる。

 一方、これらを受けて、伝え聞くところによれば、高体連登山専門部は、11月半ばまでに、今年6月の県総体の会場を南蔵王から船形山に変更することを決定。当然のこと、大会は危険だが、通常の山行なら安全ということはないので、保護者の心配も考えると、蔵王での登山活動は当分の間、自粛(実質禁止)という判断を、その後下した。更に、10月の新人大会も鬼首に変更するという。昨日から今日にかけて予定されていた山行は、これらの流れの中で決まったものである。自然が相手とは言え、今のように噴火が現実化していないどころか、現実的な可能性としては決して高くない状況で、例年通りの活動を中止にすることは、現場責任者である顧問にとっては悩ましいことだっただろう。

 私は、11月半ばくらいまでは過剰反応だと思い、最近の学校の萎縮傾向の強さを嘆いたり憤ったりしていたが、その後、火山性微動の報道が繰り返されると、まだたいしたことはないなと思いつつ、結果が全てで、何か事が起これば執拗に激しく責任が追及される現実がある中、「しょせん部活」でリスクを冒すのはバカバカしい、いかにも軟弱な感じはするけれど、中止は仕方あるまいと思うようになった。サッカーや野球のようなチームプレーではないけれども、一つの部で動いている時に、自分だけは行かないということも言いにくく、そういう強制力が働くと、事故が起こった時にますます問題がこじれる、ということにもなる。

 井戸沢小屋の醍醐味は厳冬期にこそある、と日頃から言っている私としては、そこに生徒を連れて行ってやれないことは甚だ残念だし、自分の責任ではないものの、なんだか裏切ったような後ろめたさも感じる。

 予防というのは恐ろしい。際限がないからである。2〜3日前には、5月に開催される予定だった山登りの自転車レース、「日本の蔵王ヒルクライム・エコ2015」の中止も決まったことが報道された。いったい、これはいつまで続くのであろうか?自己責任で、個人の山行や観光には行く、他人について責任が発生するような組織的なことはしない、というあたりで続けていくしかないのであろうか。なんとなくスッキリしない気分が尾を引くのであった。