今年は「進路だより」



 職場で「進路だより」というのを発行した。今年の私は、進路指導部長という肩書きを与えられ、クラスはおろか、学年にさえ所属していない。他の教員が年度始めで忙しくしている中、いまだ求人票の受付にも間のある今時分は、いろいろと雑事はあるものの、比較的のんびりしている。そこで、とりあえず、第1回の「進路だより」は私が書こうと言った。

 以前出していた名前のない学級通信とは違い、全校生徒と全教職員に配付するもので、公的性格ははるかに強い。さて、どんな書き方をするかな、と少し迷った。昨年の「進路だより」は、A4版のワープロ打ちだったのである。それをパラパラと見ながら、結局、以前の学級通信の書き方を踏襲することにした。つまり、B4版の手書き、裏は新聞記事という「あの」形式だ。慣れないことをしてもいい結果は生まれない、という思いもあるにはあったが、やはり人の心を動かすのはアナログの力だ、という確信が強かったのである。一応、事前に進路指導部のそれらしき人々に目を通してもらい、これならよかろうということで印刷・配付した。

 学級通信と違って、私が配りながら反応を見ることは出来ない。生徒の反応はよく分からないのだが、教員の反応はおそらくよかった。いろいろなことを言われたが、おととし私が発行していた学級通信を知っていたある若い先生が、「久しぶりで平居先生の世界に接して感動しました。じつは、おととしの学級通信、僕はまだ捨てられずにとってありますよ。」と言ってくれたのは嬉しかった。そして、第2回以降も、私が書くことになってしまった。こんなことをしていると、若手が育たないな・・・。

 というわけで、校内の瑣事や事務的な話以外で、差し障りのない記事を、例によってここで公開していくことにする。ただし、学級通信のように毎週1回とか出すわけではない。

(4月15日付け「進路だより№1」より)

【今年度の方針】

 生徒一人ひとりの実態に合った進路指導を行い、進路達成率100%を目指す。

 進路に対する意識を高揚し、職業観、勤労観、倫理観の育成を図る。

【重点目標】

 ・早期に進路意識を高揚させ、指導の充実を図る。

 ・主体的・能動的な進路選択、進路決定が出来るように生徒を支援する。

 ・将来の地域産業を担う人材を育成し、地域に生徒を送り出す。

(ここまでは、学校の方針を貼り付け。以下が、私の書いた部分)

(解説)

 3月24日の終業式で、前進路部長O先生から、「進路を決め、実現させるのは皆さん自身だ。先生たちではない」という話があったのを憶えているだろうか?それが全てである。生徒諸君が自分自身で悩み、考え、調べ、勉強して進路を決めるのでなければ、大学や会社に入ってから長続きしない。就職・進学は、ゴールではなく、スタートだからね。私たち教員に出来ることは、そのための援助だけである。だから、諸君が主体的に行動しない時、先生たちの側であれこれ動いて、進路決定率100%を実現させようという気はまったくない。上は、あくまでも、諸君の努力の結果として100%になればいいなぁ、という目標だ。


【「あいさつ」はなぜ必要とされるか?】

 裏面の新聞記事(4月4日付け『朝日新聞』土曜版be青より「beランキング 新社会人に望みたいこと」)を参照して欲しい。大人が新社会人に求めることの№1は、「あいさつをする」だ。そういえば、私は春休み中、県内のある中企業の社長と話をする機会があったのだが、どんな生徒(新入社員)が欲しいですか?という質問に対して、迷うことなく、即座に返って来たのは「せめて大声であいさつのできる生徒が欲しい」というものだった。彼は続けて、「これは私だけの思いではなく、多くの会社経営者の思いです。しかし、ほとんど皆あきらめムードですよ・・・」と言った。

 えっ?!それだけでいいの?どうしてそんな簡単なことが大切なの?と一瞬思う。しかし、本当に大切なことは一見簡単で、一見簡単なことをとことん実行することは、実はとても難しいのだな。某社長の話を聞いていると、大きな声であいさつをする・・・そこには、元気(仕事に対する情熱)、自分についての自信、相手に対する誠実な姿勢、礼儀作法を中心とする社会常識、けじめある生活態度などの、仕事をしていく上で必要なあらゆる要素が表れている、と彼が考えていることがよく伝わってきた。

 新聞記事に戻る。「遅刻をしない」の2位以下、日頃、宮水の先生がうるさく言うことばかりだ。なぜ言うか?・・・これで分かるよね。