「私的研究本」の展示会 in 石巻



 我が家でも、ようやく藤の花が咲いた。駐車場に生えている巨大な松の木に絡みついた蔓から、立派な房が幾つも垂れ下がっている。藤の紫は私の好きな色だ。もう少し濃くてもいいかな、とは思うこともあるけれど・・・。

 昨日はフリーの1日。午前中、「カンケイマルラボ」という石巻離れしたおしゃれな器店に足を運んだ。芸術作品のような器(陶器だけでなく、ガラス器や漆器などもある)を扱う知る人ぞ知る有名店で、遠来の客も多い。道路を挟んだ向かい側に「観慶丸本店」という店があって、こちらは量産品も扱う、「ラボ」に比べると少し大衆的なお店だ。「ラボ」は若夫婦、「本店」は老夫婦がやっている。縁あって、みなさん私の知り合いだ。

 足を運んだのは、芸術作品を買いに、ではない。本を持って行ったのである。「Book!Book!Sendai」という民間団体が主催して、5〜6月に県内42箇所で「私的研究本」の展示会というのが開かれる(→主催者のHP)。石巻会場は2箇所で、そのうち1箇所が「ラボ」である。1ヶ月ほど前、ここに何か出して欲しい、という依頼があった。私はあれこれ悩んだ結果、「旅」というテーマで出品することにした。

 依頼があった時、私が当惑し、悩みもしたのは、主催者の意図を計りかねたからである。というのも、どこにでもある本を出しても面白くないだろうが、貴重な本を出して傷むと困るからである。企画の目的は、来場者の知的好奇心を刺激する、或いは、来場者が新しい世界に触れて視野を広げるということであり、本は来場者が自由に触れるように展示したいらしい。

 私の専門は中国現代史なので、「私的研究」と言われると、まずそれが思い浮かぶ。実際、日本に1冊しか存在しないのではないか、と思われるような珍しい本もある。だが、その大半は中国語で書いてあるので、来場者は何となくもの珍しくは思うかも知れないが、ちょっと手に取ったくらいでは、何が書いてあるのかも、どんな世界なのかも分からないだろう。しかも、半世紀以上前の本は経年劣化がひどい上、更に傷むととても困る。そもそも、「私的研究」というのが、そんなに生真面目なものなのか、「興味があるから本を多少読んでみました」というレベルなのかも、説明はあったが実感としてよく分からない。

 そこで、さんざん思案した挙げ句、一般書でありながら、もはや目にするチャンスがあまりなく、少しだけなら傷んでも目をつぶれる、といった程度の本をなんとか選んで、3冊、いや3種類、能書きを添えて持参した。

 「ラボ」に展示される私以外の人とテーマ、開催期間は、次のとおり。


 三谷龍二木工作家)「日々の道具」

 坂田隆(石巻専修大学)「さばく」

 須田佑(観慶丸本店)「時刻表を読む」

 須田マサキ(カンケイマルラボ)「本の本」

 6月5日(金)〜14日(日)、10:00〜18:00のオープン。

 

 私が何を出したか・・・?それは見てのお楽しみ。気が向いたら、このブログで紹介するが、来られる範囲に住んでいるなら、「ラボ」見物も兼ねて出向いた方が面白いと思う。