仙石東北ラインのハイブリッド車



 県総体の登山隊ご一行様は、9:30に仙台駅東口集合だった。我が家からは、JR石巻駅よりも高速バスの停留所(中央3丁目)の方が近い。買い置きのバス回数券もたくさんある。それでも、時刻表を見ていて、8:11石巻発9:18仙台着といういい時間の快速列車があることを知って、開通したばかりの仙石東北ラインというのに乗ってみようという気になった。

 先日書いたとおり(→こちら)、東日本大震災で被災した仙石線は、一部区間を内陸に移設して、5月30日に開通したのだが、スピードアップのために、松島駅のすぐ南に仙石線東北本線の接続路を作り(実は以前からあったので、正しくは「整備し」)、快速列車は高城町〜仙台を東北本線経由とした。ところが、仙石線(直流)と東北本線(交流)の電化方式が違う上、接続線は非電化なので、その問題をクリアーするために、快速列車をディーゼル化し、更にハイブリッド化した。

 東北本線は、黒磯以南が直流で、以北が交流である。今は、黒磯で必ず乗り換えが必要だが、昔は、黒磯を挟んで南北を直通運転する特急や急行がたくさん走っていた。交直両用電車が使用されていたので、何の問題もなく2種類の電化方式の間を行き来できたのだ。特急「ひばり」に乗っていると、黒磯駅で一度室内灯とモーター音が消え、慣性走行しながら直流・交流の切り替えを行っていた。もっとも、黒磯駅に停車する電車もあったし、機関車の付け替えも行われていた(=これは現在も?)わけだから、交流用と直流用の架線が並べて張ってあったかも知れない。いずれにしても、接続線なんてごく短いもので、電化の手間が掛かるとも思えないものだし、電化方式を切り替える技術は数十年前に完成しているわけだから、なぜディーゼル車ご登場となったのか、私には分からない。

 仙石東北ラインの快速列車は、私が嫌いなエンジン音を響かせることもなく、静かに、スムーズに発車した。新しい車内は美しく、新車のにおいもして気持ちがいい。壁にモニターが付いていて、エンジン、車輪+モーター、屋上のバッテリーが、主変換装置というものを通して接続されている様が描かれ、そこを電気がどのように流れているかが常に表示されている。エンジンが動いていなければ、基本的にバッテリー→主変換装置→モーターと電気が流れ、エンジンが動き始めると、エンジン及びバッテリー→主変換装置→モーター、そして、発電力が消費電力を上回ると、バッテリーに向かって電気が流れ始める。エンジンが動いている時間はさほど長くない。むしろ私にとって不思議だったのは、バッテリーが放電している時間の方が、充電している時間よりも相当長く感じられたことである。こんなことをしていたら、電池は消耗するばかりではないか、と思った。もちろん、モニターに表示された電気の流れは、方向を示しているだけで、量は示していないわけだから、放電の時はわずかな電流で、充電の時は大電流が流れている可能性がないとは言えない。だが、やっぱり、その可能性は低いだろう。不思議である。

 陸前大塚あたり、松島湾の美しい海を眺めることができる場所では、防潮堤が多少高くなってはいたものの、コンクリートの壁ばかりを眺める、というほどひどい状況にはなっていなかった。行きも帰りも、なぜか接続線でしばらく停車した。なんだか鬱陶しい。

 なにしろ、仙石線区間が単線であることは変わらず、そのため、列車交換のための停車もあって、往路で私が乗った快速は、以前の快速と全然変わらない67分を要した(復路は63分)。運賃もバスより列車の方がやや高い。それでも、やはり列車の定時運行の確率の高さに対する信頼感は大きい。石巻駅から仙台駅までに関して言えば、バスよりも所要時間が10〜15分短かく、終電は終バスより1時間半以上遅いというメリットも大きい。だが、私が何よりもいいと思ったのは、今回の新型車両が、ロングシートではなく、クロスシート(4人ずつのボックス席)中心だという点だ。ロングシートの電車は、単に人を運ぶ箱という感じで、味気ない。常に多くの人の目にさらされる上、混んでくると目の前に人が立つため、車内での飲食もしにくい。新型車両がクロスシートであることによって、仙石線は少し旅のための列車の雰囲気を取り戻した。

 開業記念ということで、石巻〜仙台の往復割引切符を売っていた。片道840円のところ、往復1200円は安い。大喜びで買ったが、帰り道、仙台駅で往復切符の有効期間が2日間であることに気付いた。県総体は3日間だ。復路用の切符は既に有効期間を過ぎて使えなくなっていたため、復路は片道切符を買うことになった。往復で2000円以上。何とも間抜けな落ちである。