偽りの世論調査



 新聞やテレビの世論調査というのを見ながら、妻が「どうしてうちには電話くれないのかなぁ?」とよくぼやいている。安倍政権と自民党大嫌いということでは私と思いを同じくする彼女は、「今の内閣を支持しているか」の類いの問いに、「いいえ」という答えを増やしたくて仕方がないのだ。

 そうしたところ、昨日の夕食時、遂にその電話が我が家に掛かってきた。電話に出たのは彼女である。ところが、待ちに待った電話のはずなのに、「パパ、世論調査!とうとう来た!!替わって、替わって!」と受話器を私に押し付ける。「何を言っているのだ!?前から世論調査に答えたいって言っていたんだから、自分で答えろよ」と言ったものの、日頃の力関係のとおり、私はそのまま受話器を押し付けられ、回答する羽目になった。調査員ではなく、自動音声である。

「あなたの家に10代、20代の人はいますか?いる場合は1を、いない場合は0を押してください。」・・・ピー

「あなたの家に30代、40代、50代の人はいますか?いる場合は1を、いない場合は0を押してください。」・・・ピー

「あなたの家に70代、80代の人はいますか?いる場合は1を、いない場合は0を押してください。」・・・ピー

「アンケートは以上で終了です。ご協力ありがとうございました。」

え???・・・・

 この時、私は気が付いた。これは世論調査でもなんでもなく、悪い人による「内偵」のようなものであるに違いない。つまり、70代、80代といった高齢者だけで生活している家を探し出し、押し売りや空き巣のチャンスを窺う、といったような目的のものであると思われた。

 妻に、「本当に世論調査と言ったのか?」「依頼主が誰か名乗ったのか?」と問いかけてみるが、答えははっきりとしない。確かに「世論調査」という言葉は使ったが、主催者名は言わなかったような気がする・・・などと言っている。だが、どこをどう考えても、これが世論調査の訳がない。

 日頃、「振り込め詐欺」や数々の「悪徳商法」など、人をだましたり弱みにつけ込んだりしてお金をむしり取るといったニュースに接しながら、世の中には悪い奴がいるものだ、そんなことに知恵を使うくらいなら、もう少し世の中のためになることを考えろよ、とブツブツ言うことが多い。おそらく、昨日の電話はそんな「悪い奴」によるものだ。私がボタンを押した回数は3回で、デリケートかつ重要と思われる情報を流したわけでもない。それでも、この情報が今後どのような使われ方をするのだろう?と思っては、何となく気味悪さを感じる。

 よく考えてみると、「NHKですが」とか「毎日新聞ですが」といって世論調査の電話が掛かってきても、相手が本当に名乗ったとおりの相手なのかは確かめようがない。電話による調査というのは難しいものだな、と思う。