海の恵みはありがたい



 先週の始め頃だっただろうか、近所の小学校の6年生が、授業で宮水の栽培実習場に「カキ剥き体験」にやって来た。私は、自分の仕事の都合で見に行けなかったけれど、なにしろ性分が卑しいので、「彼らのために入手したカキを全部実習で使い切ったわけがないな」と思っていた。先週末、会議の際に、たまたま私の向かいに生物環境類型の実習助手H先生とA先生が座ったので、「いま実習場に行ったら、もらえるカキある?」と尋ねてみた。二人は、「先日の小学生の時の残りがありますよ。自分で剥くなら、持って行っていいですよ」と答えた。ほら見ろ、思っていたとおりだ。

 実習場のボス=生物環境類型の類型長M先生に内緒もまずいので、H先生、A先生とそんなやりとりをしたと話したら、M先生も快く了解してくれた。そして、次のような会話をした。

「どうせ実習場に置いておいても痩せていくばっかりですからね。もう粒が小さくなっていますし、生で食べるのは止めて欲しいですけど、よかったら持って行ってください。」

「痩せていくっていうのは、水中の養分が少ないからですか?だけど、実習場の水槽って、万石浦から取水した水を絶えず入れていますよね。」

「いやぁ、確かにそうなんですけど、不純物除去でフィルター通しちゃってるし、牡鹿半島の水なんかに比べたら栄養分の量なんて比較にならないですから・・・。」

 なるほど、外洋の水は偉大だな。そこに下げておけばカキは肥ってくる、実習場の水槽だと痩せてくる。そう言えば、カキというのは、養殖とは言っても、そもそもが自然の力による養殖だ。つまり、ホタテの貝殻か何かを海の中に下げておくと、自然と幼生が付着し、それが海中の養分を吸収して成長する。餌をやったりなんかしない。人間が育てているのではなく、人間は海の中で勝手に育ったカキを回収する装置を作り、管理しているだけなのだ。全ては「海の恵み」なのである。

 今日の朝、実習場にカキ剥きに行った。「平居先生が来るんだったら、俺もやろうかな・・・」と言って、M先生も一緒にカキ剥きをした。確かに、身は小粒で、色もあまり良くない。アイボリーのような色のプリプリに盛り上がった身ではなく、なんだかいかにも元気のない、少し緑がかったような身だ。多分、「生で食べるな」と言われていなくても、生で食べる気にはならなかっただろう。それでも、小1時間で800グラムほど集めた。

 カキフライにするのも面倒くさいなあ、と思っていたら、進路室にいるM嬢が、ニンニクを炒めた油で片栗粉をまぶしたカキをソテーにし、塩を振りかけて食べると美味しいと教えてくれたので、やってみることにした。確かに簡単な料理だが、私の料理の腕が悪いのか、カキそのものが良くないのか分からないが、「最高!」とは言えなかった。子供は食べない。それでも、赤ワインとの相性が良く、妻と二人で全部食べてしまった。今度は牡鹿半島に買いに行こう。「海の恵み」ありがたや、ありがたや。