この「1票」は価値あり!

 一昨日、最優秀選手(MVP)と最優秀新人(新人王)の選考が行われた。このニュースを耳にすると、プロ野球もシーズンの終了を実感する。
 昨日、それらについての新聞記事を読みながら、ひどく気になったことと、釈然としないことがあったので、書いておくことにする。
 気になったのは、MVPである。パ・リーグの有効投票数が254、そのうち大谷翔平を1位としたものが253で、2位としたものが1であった。次点はレアード、次々点は中田翔であったが、この二人を1位とした票はゼロであった。ということは、大谷を2位とした一人は、レアードも中田翔も1位にしなかったということである。得点順位4番以下は新聞に載っていない。この一人は、いったい誰を1位にしたのだろうか?我が家の野球博士である息子に尋ねても、心当たりがないと言う。
 2日間、気になっていたので、さきほど、日本野球機構(NPB)のホームページを見てみたら、ちゃんと載っていた。大谷を2位とした一人は、1位票を宮西尚生に投じていた。
 宮西は大谷と同じ日本ハムの投手である。中継ぎの専門家だ。今年は39ホールドで、初めて最優秀中継ぎのタイトルを取った。防御率は1.52。3勝1敗、2セーブ、これらの成績も中継ぎ投手として立派なものである。プロ入り9年目で、通算232ホールド、防御率2.37。チームはこの実績に敬意を表して、地味な役回りの選手ながら、2億円近い年俸を与えている。なるほど、かの1票の主は、宮西がMVPに選ばれるなんてあり得ないと知りつつ、このような地味な、縁の下の力持ちに近い選手にスポットライトを当てるべく、あえて宮西に1位を与えたと見える。問題提起の1票だ。この票を入れたのが誰かは分からないが、私はこういう行動を取る人が好きだ。
 一方、こうなってくると、「ホールド」というものについての多少の不満を書いておきたくなる。どのような場合にホールドポイントが認められるかというのは、要件が多いので、Wikipediaでも見てもらうことにするが、重要なのは、負け試合で点差を広げられないような働きをしてもホールドは付かず、同点か勝っている場面でのみ付くということだ。中継ぎで、点差を広げられないようにしながら次のピッチャーに繋ぐ、この役割に勝ち試合も負け試合もないだろう、と思う。中継ぎが頑張って点差を広げられなかったことで、負け試合の流れが勝ちに向くということだってあるはずだ。中継ぎの勝利への貢献度は、勝ち試合か負け試合かによっては比較できない。セーブポイントにも同じような性質がある。そしてこれらの結果として、と言うべきか、投手に負け試合用の投手と勝ち試合用の投手が生まれてしまっているのは、どうも不公平だし、その不公平は感情的な問題ではなく、理屈において不公平であると感じる。
 運が良くて勝ちの付く投手もいれば、毎回いいピッチングをしながら勝ちに恵まれない投手もいる。やはり、投手の実績は防御率が最も公平な指標だな、とよく思う。
 釈然としないのは新人王である。パ・リーグでは、高梨(日ハム)がそれを取り、茂木(楽天)が次点であった。高梨の得票数は131、茂木は116、その差はわずか15票である。新人王の受賞の資格要件は「海外のプロ野球リーグに参加した経験のない選手のうち、支配下選手に初めて登録されてから5年以内で、前年までの出場が投手は30イニング以内、野手は60打席以内の選手」となっている。どうしてこんなに面倒なのだろう?高梨は大卒3年目、茂木は1年目だ。投手と野手の成績を比較することの無理もともかく、10勝と117試合出場2割7分8厘、7本塁打、40打点を比べ、プロ野球選手としての2年の差を考えれば、「新人」としては明らかに後者が優れていると私は感じる。
 新人王の資格要件が良くないのだ。新人王は新人に与えられるべきだ。高卒と大卒の不公平を是正する措置くらいは設けてもいいかもしれない。1軍戦に出たか出ないかに関係なく23才になる年までが新人、それ以上の年齢でプロ入りした選手は入団の年だけ、これくらいがすっきりしていていいのではないだろうか?昔は年齢、キャリアに関係なく、プロ入り初年度の選手にだけ資格があった。どのような議論の末に、今のような形になったのかは知らない。だいたい、制度が複雑化する時には、強い者の変なたくらみがあったりする。そうでなければいいのだけれど・・・。
 そうそう、MVPとも新人王とも、その他の「なんとか王」「なんとか賞」とも関係がないのだが、この選手の実績はどのように評価されるだろう?・・・私が契約更改をとても楽しみにしている選手が一人いる。お楽しみに。