投手泣かせの大選手

 先日、プロ野球のMVPと新人王についての記事を書いた(→こちら)。その時、実は契約更改が気になる選手が一人いるのだ、ということを書いた。そうしたところ、その選手は、私が記事を書いたその日に契約更改があったらしく、翌日の新聞に載っていた。なんの特別扱いもない。小さな小さな記事である。
 その選手とは、日本ハム内野手中島卓也だ。
 今シーズンの打率は2割4分3厘で、パ・リーグ規定打席に達した選手28名中ビリ。それでも、犠打数62はパ・リーグ記録。盗塁は23で4位。そして何と言ってもすごいのはファウル数だ。昨年も599本で、両リーグ通じてトップだったが、今年は759本。パ・リーグでは2位角中が520本だったようだから、正に圧倒的である(セ・リーグや過去の記録は探せなかった。ファウル数は公式記録にならないので、データが見付けにくい)。その結果、四球が多い(敬遠されがちな中田翔やレアードより15くらい多くて、パ・リーグ10位)ので、出塁率は打率の割に高い(3割3分3厘で21位)。更に、体が丈夫で全試合出場!(失策14でワースト5が玉に瑕)
 ファウル759本ということは、中島のファウルだけで、相手投手は1試合平均5球以上余計に投げさせられるわけだから、これは本当につらい。それでいて、足があり、犠打も上手いとなれば、相手チームとして、これほど嫌な選手がいるだろうか?決して2割4分3厘という打率にだまされてはいけないのである。
 さて、契約更改はといえば、2000万円アップの1億円ということらしい。もちろん、年収1億円というのは、私のような平凡なサラリーマンにとっては、ほとんど天文学的な数字だし、プロ野球選手についての私独自のどんな計算式があるわけでもないのだが、なんとなく物足りない。チームが勝つための選手としては、もっともっと評価されていい選手なのではないだろうか?
 ついでに言っておくと、楽天の福山博之投手。中継ぎで69試合に登板し、防御率2.71。そもそも、この69試合登板というのが驚異だ。同じ楽天のクローザー・松井裕樹は58試合登板で防御率3.32。それでいて、福山は7500万円(3000万円増)、松井は9000万円(2500万円増)。年齢は福山が7つ上。これでは福山が気の毒である。いいように使われている、という感じがする。「中継ぎ」の地位にも関わる。そもそも、松井が鳴り物入りでドラ1入団した「松井裕樹」でなかったら、クローザーとして最後まで使ってもらえたかどうか?それほど四球が多く、危ない試合が印象に残った。先日話題にした、中継ぎとして似たような役回りで成績が少しいい日ハムの宮西(2億円)を思い出すと、福山への気の毒感は更に強くなる。
 プロ野球はあくまでも興業であり、金になるかならないかで評価が決まる人気商売だ、ということなのかも知れないが、それでは少し寂しい。我々ごく普通のサラリーマンとは別世界、平凡な一軍選手の給料が私の10倍だとして、彼らの能力の特殊性と強運、つまりそのような立場に立てることの確率の低さ、更には彼らによって世の中で動いている金の総額というものを考えてみると、彼らの価値は私の10倍や20倍どころの騒ぎではないはずだから、それはそれで評価してあげなければ、と思う。
 大谷翔平の2.7億円は?・・・もちろん論外。自分自身のモチベーションと正面から向き合い、周囲の騒ぎや評価に無頓着だという立派な姿勢(今年1月3日の朝日新聞beの大谷特集は感動的だった。私がよく引く高村光太郎の「原因に生きる、結果は知らない」をそのまま生きている感じ)に球団がつけ込んだ、ということだろう。