春のワカメと馬っ子山

 高校入試(後期選抜)も終わったこの時期、毎年、宮水の生物環境類型は牡鹿半島中央部、小渕浜というところにワカメの加工実習に行く。私は付いて行ったことがないのだけれど、いつもお土産だけは大量にもらう。今年も、2年生が7日、1年生が10日に実習を行い、大量のワカメを持ち帰ってきた。メカブと生ワカメと塩蔵ワカメの3種類だ。私は自転車のかご一杯それらを分けてもらい、ワカメ三昧の日々を過ごしていた。
 ツナ缶とマヨネーズとワカメをからめてのサラダ、そしてメカブがあると、本当にご飯が進む。メカブは茹でてから、フード・プロセッサーで細かく刻む。フード・プロセッサーという文明の利器を最もありがたいと思う瞬間が、このメカブ処理だ。なにしろヌルヌルなので、手で刻もうとした日には、メカブを押さえているだけでも大変。まして怪我をしないようにそれを包丁で刻むのは至難だ。
 牡鹿半島の海の幸と言えば、まず頭に浮かぶのは牡蠣なのだけれど、ワカメも負けず劣らずよい。春の海を食卓の上で満喫している気分だ。海の恵みはありがたい。

 今日は3月11日。言わずと知れた東日本大震災の記念日だ。宮城県では「宮城鎮魂の日」という県の休日。おかげで、子供たちの野球も珍しくお休み。少し寒くて、多少の風はあるものの、快晴の素晴らしい天気なので、朝から子供と一緒に近くの山に登りに行くことにした。石巻専修大学の北にあるトヤケ森山(174m)、通称「馬っ子山」である。低い山なのに、なぜか頂上部が裸であることもあって、これほど見晴らしのいい山というのもない。石巻の市街地と、それを取り巻いて流れる北上川石巻の北西に広がる平野というものが、何の障害もなく見渡せる。正に絶景スポットだ。パラグライダーの飛び出し地点にもなっているらしいが、実際、その場に居合わせたことはない。あまり道はよくないが、頂上まで車ででも上がれる。学校の遠足などで行った時にも、この車道を歩いた。
 ところが、頂上に着くと、東側から登山道が合流しているのに気付く。以前から、この道どこから上ってくるのかなぁ?と気になっていた。今日はその道を探しに行くことに決めた。我が家にある少し古い2万5千分の1地形図を見てみると、山の北側から頂上のすぐ近くまで道がついていて、道の在処についての見当は付くのだが、山頂で見る登山道が本当の小径であるのに対して、地形図上では実線、すなわち「軽車道」(車1台がようやく通れる幅)になっている上、山頂の手前で線が切れている。ともかく、まずはその道をたどってみることにした。
 市の総合運動公園駐車場に車を置き、歩き始める。山を覆う杉林を目にして、マスクを持ってこなかったことを後悔した。山の北側からの道は、入り口にゲートがあって、車が乗り入れられないようになっているが、舗装された立派な道だ。尾根に上がりきると、すぐ近くに送電線の鉄塔があるので、それを維持・管理するための車道なのだろう。そこで舗装が切れる。道幅は狭くならないが、未舗装の軽車道は地形図通りに山頂のすぐ東まで続いている。途中、石垣などもあって、歴史的な想像をかき立てる。もっとも、その石垣は新しいもののようにも見える。地形図通りの場所で、道はぷつんと行き止まりになっているが、そこから、山頂まで正に踏み跡といった感じの小径が伸びている。これで問題解決だ。すぐに絶景の頂上に着いた。
 下りは車道である。こちらの方が、車を置いた運動公園のより近くに下りることが出来るからだ。山中で会ったのは2人。杉林はあるが、朝のうちでまだ気温が低かったせいか、花粉で不快な思いをすることはなかった。頂上でほとんど立ち止まらなかったこともあり、一回りでたったの1時間半。自宅から総合運動公園までが車で片道15分なので、全行程2時間ほどの軽い散歩にしかならなかった。それでも、懸案解決。未知の世界を探求するのは楽しい。