旧門脇小学校の整備方針に関する説明会

 今日の午前中は、市の中央公民館で行われた「旧門脇小学校校舎の震災遺構整備方針に関する説明会」というのに行った。
 私がこの会を知ったのは昨日の河北新報でである。「被災校舎どう残す 石巻・説明会を前に」という紙面の4分の1をも費やした大きな記事が出て、既に「部分保存」と決定している門脇小学校の具体的な整備計画についてレポートし、今日の説明会のことが書いてあった。
 今更説明は必要ないだろう。東日本大震災で1階の3分の2くらいが津波で浸水した上、火事が起こってかなりの部分が燃えた有名な小学校である。我が家から徒歩1分。家の中から常に校舎の屋上が見えている。昨年の2月に、校舎の保存についての公聴会が開かれ、私も発言をしたという記事を書いたので、とりあえずはそれを見て欲しい(→こちら)。
 さて、部分保存とは言っても、どれくらいの「部分」かというのは、まったく決まっていなかった。玄関付近だけ、という案から、燃えた部分のほとんど全て、という案に至るまで、様々な可能性が考えられてきた。内部を見学できるようにするかどうかも大きな争点だった。昨日の河北の記事によれば、市は校舎の体積から考えて半分を上回る、かなりの「部分」を残す方向で方向性を定めたようだった。前回の記事を読んでいただければ分かるとおり、私はかなり強固な完全解体派なので、当然「止めときゃいいのに」と思った。しかも、これならかえって全部を残した方が、面倒がなくていいのでは?とも思った(一部解体のためのデリケートな工事が必要で、しかも跡地が有効活用できるほど広くない)。
 同時に、今日の説明会については、こんなところに人が来るのかな?と思った。そもそも説明会の存在そのものの周知がされていない。前回の市報に書いてあったかどうか記憶にないが、私の知る限り、昨日のこの河北の記事だけで、今日の河北にも「石巻かほく」にも載っていなかった。新聞には対象者が、「地元住民、過去に住んでいた人、今後住む予定の人、卒業生」と書いてある。つまり、市民なら誰でも参加して良いわけではない。もちろん、「震災遺構の保存に興味があるので、仙台から来ました」などという人がいたとして、それを受け付けで閉め出したりはしなかったと思うが、制限しようとしていたのは確かなのである。これは、門小の整備が、数億円規模の市税を投入するプロジェクトであることから考えると、不当な入場制限である。
 大きく宣伝して人がたくさん集まり、面倒なことになるのを恐れたのではあるまいか?大々的にやらなくたって、「ちゃんと説明会もしました」という言い訳は出来る。まぁ、今更誰も関心なんて持っておらず、大々的に宣伝しても人なんか集まらないと思うけど・・・。
 私も、たまたま空いている土曜日ではあったが、保存の賛否を議論するならまだしも、今更何を言ってもどうしようもないわけだし、行っても時間の無駄だな、と最初は思った。少しすると、どれくらい人が集まらないものなのか、現時点で保存のあり方についての説明会が、どのような雰囲気で行われるのか、ということに激しく興味を感じ始めた。そしてとうとう、怖いもの見たさで行くことにしたのである。
 会場に集まった市民は21名だった(座席は70用意されていた)。ただし、中には、ごく普通の市民とは言えない、NPO団体の代表者のような人の顔も見られたから、本当の一般市民は17〜8名ではないか?と思われた。これは、保存の是非でもめていた時の公聴会が約50名であったことを思うと、「多い」とも言える。とは言え、ずらりと並んだテレビカメラが5台(=在仙の全放送局)、報道関係者は20名ほど、市のお役人も、市長を始めとして20人あまりだったことから考えると、主役である市民の参加者はなんとも少ない。
 会が始まる直前、ある放送局の人に声をかけられた。どういう思いで、何を期待して来場したか?というような質問だった。私が、自分は解体派であること、市の説明に期待しているものは何もなく、どんな人がどれくらい来て、会場がどんな雰囲気になるのかということに興味があって、いわば観察のために来たのだ、と答えたところ、「ありがとうございました」と言って、すっと去って行った。彼が語りたい「物語」には合わない人間だと判断された、ということがはっきり分かった。まあ、当然なのだけれど・・・。
 最初に司会者が、「本日の会は2時間を予定しています」と言ったので、えっ!!?そんなに何を話すことがあるの?と仰天した。ところが、市長挨拶、担当者からの説明、質疑応答と進み、終了までにかかった時間は30分だった(笑)。たいした質問は出なかった、ということである。
 新聞報道のような校舎の保存だけではなく、校庭やエントランス、更に復興祈念公園と門脇小学校の敷地とを結ぶ「街区公園」なるものも整備するらしい。今から調査設計に取りかかり、来年度末に着工、再来年度末までに完成させるのだそうだ。お金がどれくらいかかるか、その後の維持管理がどれほど大変か、ということもあまり気にならず、これは今後の防災教育に役立つとてもいい施設になるぞ、と信じていられる人が私には羨ましい。