「花になれ」・・・塩高吹奏楽部の定期演奏会

 山岳部の顧問で、来週末は県総体なのに、生徒が山へ行きたがらないので今週末も休み。喜んでいいのか悲しんでいいのか、よく分からない。
 今日の河北新報には「南極見聞録 こちら越冬隊 Dr,大江」の第5回が載っていた。テーマはなんと、昭和基地内の郵便局である。先日、我が家に届いた昭和基地消印(→こちら)の謎が書いてある。
 それによれば、昭和基地内には、日本郵便から委嘱を受けた隊員が郵便局長を務める「銀座郵便局昭和基地内分局」というものがあって、切手やはがきの販売、押印が許されているらしい。南極での観測活動を支えている国立極地研究所立川市にあるのに、どうして銀座郵便局なんだろう?という疑問がすぐに浮かんだ。考えてみると、南極からの郵便を運んできた「しらせ」は、晴海埠頭に着岸する。晴海は中央区で、その中核となる郵便局が銀座郵便局だからだ、と思い至った。もっとも、いくら基地内に分局があっても、年に1回「しらせ」が来た時しか便は出せないわけだから、ほとんどユーモアの世界だ。昭和基地から日本まで14000㎞。いいなぁ、この隔たりの感覚。
 今日の午後は、多賀城市文化センターで行われた塩釜高校吹奏楽部の定期演奏会に行った。
 なにしろ学校内にピアノの1台もないという水産高校から異動したので、朝と言わず放課後と言わず、四六時中楽器の音が聞こえている学校というのは新鮮だ。最近は、朝から「ウェストサイド・ストーリー」を合わせているのがよく聞こえてきて、なんだかわくわくするような気分になっていた。
 会場である多賀城市文化センターの大ホールは1120人収容。なにしろ生徒数1200人の大規模校だし、高校の吹奏楽部の定期演奏会というのは、他校の部員も多数詰めかけるのが常(?)なので、会場から人があふれかえっているのではないか?と心配しながら、開演の20分前に着いた。残念ながら客は300人強くらいかな?もったいない。
 延々2時間半に及ぶステージは、ちょっと長すぎるかな、という点を除くと大変よかった。曲を仕上げるだけならともかく、演出やステージの進行なんて、いつ準備をしていたのだろう、と感心させられた。塩釜高校吹奏楽部は、全日本吹奏楽コンクールの県大会では、だいたい毎年銀賞(真ん中)らしい。決してとびきり上手というのではないのだが、楽しそうだし、ひたむきだし、アマチュア音楽の良さが全開、といった感じである。しかし、実は、特に私の印象に残ったのは、たった1曲だけ披露された吹奏楽部員による「合唱」であった。
 数日前、彼らが合唱をしている姿を目にした。おそらく、吹奏楽部で合唱に取り組んでいる部は少なくない。むしろ、レベルの高い学校ほど合唱を練習に取り入れている割合は高いと思う。まわりの音を聞き、上手くハーモニーを響かせる練習として効果的なのだろう。だから、学校で彼らの合唱を目にした時にも、「ああ、この学校の吹奏楽部も練習に合唱取り入れているんだ」とだけ思ったのだ。それが、定期演奏会で披露されるとは思わなかった。
 曲目は「花になれ」(指田郁也詞・曲。伴奏はピアノ)。塩高の吹奏楽部は44名からなるが、男子は6人しかいない。だから、ほとんど女声合唱だ。いささか騒々しいブラスバンドの曲が続いていたところにこの合唱は、鮮やかな舞台転換、と言ってよかった。しかも、副業とは思えないほど上手。暑苦しい室内に、涼しい風が吹き込んできたような、そんな清涼感と透明感に満ちて気持ちよかった。
 確認しておくが、彼らの本業である吹奏楽吹奏楽でよかったのである。ただ、ちょっと意表を突いた新鮮さで、合唱が印象に残ったということ。ごくろうさま。