面倒くさい人間・・・にっぽん丸が来た

 昨日は朝からどんよりと曇っていた。眺望絶佳の我が家からも、海がどこにあるかさえ分からない状態。8:30に、大昔の卒業生である内装屋Kがカーテンの修理に来てくれた。見えない海から、ボーッ、ボーッといつになく大きな汽笛が聞こえてくる。Kが、「よく聞こえますね」と言う。沖に浮かぶ網地島へ行く船が出るのは9:00だから汽笛はまだのはずだし、確かにいくら雲が低いとは言え、ずいぶん大きく響く汽笛だなぁ、と思っていたら、なんと豪華客船「飛鳥Ⅱ」(50,142t)の入港だったということを今朝の新聞で知った。私はその後、用事で仙台に出向いたので、どっちみち見物には行けなかったのだが、5万トン級の客船、間近に見てみたかったなぁ。
 「飛鳥Ⅱ」についての記事の末尾に、続けて今日は「にっぽん丸」(22,472t)が石巻に入港する、と書いてある。あわてて外を見る。7時半だ。今日は昨日と打って変わって快晴。我が家からは海が真っ青に見えている。すごいタイミングだ。沖から明らかに大型客船と分かる船が近づいてくるところであった。何年か前にも、「にっぽん丸」は石巻港で見たことがあったし、すぐに分かった。なにしろ「にっぽん丸」は船体が群青色に塗られているという、大きな特徴があるのである。船はみるみる近づいてくる。雲雀野埠頭(昨年「ちきゅう」を見た所→その時の記事)を通過し、工業港の中に入るようだった。我が家から見えるのはここまで。
 午後、買い物ついでに息子と見に行った。名古屋や苫小牧に行くフェリーよりも1万トン近く大きいし、スマートで美しいが、びっくり仰天というほどではない。もちろん、中には入れない。豪華なレストランらしき所が、船の真ん中あたりに見えている。
 それにしても、昨日は「飛鳥Ⅱ」、今日は「にっぽん丸」。いったいどんな人が乗っているのだろう?暇もお金もたくさんあるという人でなければ乗れないはずだが、そんな人が世の中にはどれくらいいるものなのだろうか?参考までに調べてみると、昨日の「飛鳥Ⅱ」は、6月7日に神戸を出て、石巻から北方4島、利尻、秋田、ウラジオストク、富山、長崎、台湾(高雄)、那覇とまわり7月11日に神戸に戻る約1ヶ月のクルーズで、一番高い部屋が818.5万円、一番安い部屋が180.8万円(どちらも、1室2名の時の1人分)だ。
 ついでに思い出すのが、最近よく話題になるJRの豪華列車である。JR九州の「七つ星」は3泊4日のコースが、船と同じ条件(1室2名の時の1人分)で65〜95万円。JR東日本の「四季島」もほぼ同じ値段だ。これまた、いったい誰が乗るの?と不思議に思う。しかも、申し込み殺到で予約を取るのが非常に難しいのだとか・・・。
 こういうことを考えていると、一方で「子供の貧困」とか「生活保護世帯の増加」などという話題が頭に蘇っては、格差というのは本当に大きいのだな、と思われてくる。
 船が消費する燃料というのは膨大である。飛鳥Ⅱの場合、乗客乗員合わせて1300人強が乗っている。停泊中も常に巨大な発電エンジンが回っていて、何不自由なく電気が使える。航行用に約33000kwのディーゼルエンジンを4基積んでいて、5万トンの船が20ノット(時速40km弱)で走れる。燃費がどれくらいかは聞くのも恐ろしい。遊ぶことの価値を評価しないわけではないけれど、あまりにも浪費が過ぎるのではないか?船を作ったら最後、減価償却のためにも、乗組員を養うためにも、できるだけ走らせなければならない。後へは引けなくなる。どんどん油を燃やすしかない。
 美しい船体を見ていると、一度乗ってみたいなぁ、とは思うけれど、多分、乗ったら乗ったでそれらのような罪悪感に駆られて落ち着かないだろう。やっぱり、荷物を運ぶことが主のフェリーに乗せてもらって、罪悪感を軽減しつつ船も楽しむ、といったあたりが私にできる限界だな、と思う。
 面倒なことを考えてしまうと世の中は楽しくない。逆に言えば、余計なことを考えず、金額は物の価値を正確に表すと無邪気に信じ、お金が払えるかどうかだけを物差しにして生活できれば楽しいだろうなぁ?いや、そんな楽しみにはすぐに飽きるだろう。だったら、本当に楽しいことって何かな?結局、面倒くさい人間は、どうしても面倒くさい存在なのである。