悲観主義者変わらず・・・都議選について

 全ての新聞で大きな字が躍っていたとおり、都議会議員選挙は自民党の惨敗、都民ファーストの会の大爆発、公明党共産党の健闘という結果に終わった。これで「悲観主義者・平居」を笑える、と思ってはならない。理由は主に次の二つである。
 まずは、「都民ファーストの会(以下「都民F」と略)」というのが何者であるかよく分からない。小池都知事の身内だというのはよく分かるのだが、知事は最近まで自民党員だった人である。堕落していく自民党の思想にまったく合わなくなって辞めた、とはあまり見えない。例によって、相変わらずの劇場政治だ、と思う。市場の問題だって、豊洲の状況を改善して移すか、いっそ放棄するかの二者択一なら分かるが、この時点でなぜ築地との並立という話になるのかは分からない。さんざん引っかき回し、膨大な出費を生じさせ、得体の知れない決着になるものだな、と私は驚いている。都民でないからどうでもいいとは言え、なるほど今回の知事はいいな、と思えるものは見つけ出せない。よく言われることだが、国政で自民党と連立関係にある公明党が、都議選では都民Fと組むというのも、どうしても理解できない話だ。
 昨日の毎日新聞日曜版で、私が大好きな松尾貴史の「ちょっと違和感」は、驚くべきことを伝えていた。これは松尾氏の特ネタではなく、朝日新聞の調査による話なので、おそらく私がうっかり見落としていただけである。
 それによれば、朝日新聞が都議選立候補者へのアンケートで「安倍政権の政権運営を評価するか」と尋ねたところ、都民Fの候補者50人のうち41人が無回答、同じく「安倍政権が示した2020年までの改憲に賛成か」という問いにも41人が無回答だったというのだ。「わからない」という選択肢が与えられていながら、無回答というのを松尾氏はいぶかしむ。そして、政権運営についての「無回答」について、「選挙後にどう転ぶかということで今は答えられないタイミングだということだろうか」と評する。
 これはウルトラ・スーパー級にいかがわしい話だ。どう考えても無回答の意図は分からない。それをあえて勘ぐれば、松尾氏が言うとおり、ということになるだろう。
 最近、自民党の2回生議員が不祥事をよく起こす、ということが言われる。安倍政権の上げ潮ムードに乗って、それまで地道な政治活動をしていたわけでもない人が突如国会議員になった。党の側から言えば、品質チェックをきちんとしないままに議員にしてしまった。その結果だという。今回、都民Fから当選した新人議員についても同様の問題は起こり得るだろう。自民党でも同じだが都民Fも、小池ブームの中で、政治的信条に基づいてではなく、利害打算によって名乗りを上げた人が相当数いるのではないか?だとすればなおさら質は危ない。彼らが問題を起こし、若しくは政治家として期待にかなう道を進まずに都民が落胆した時、「結局、自民党に任せるしかない」という反動は強くなる。私はそれを危惧する。
 もう一つは、今回の都知事選で惨敗したことを受けて、自民党が(国民をだませるレベルの)姑息な方法で党体制の見直しを図り、肝心の国政選挙で勢力を盛り返すことへの心配である。そうなってしまったのでは、逆に都議選を怨みたくなる。
 人間というのは、そう簡単に賢くなるものではない。期待は禁物である。自分は苦労したくない、誰かに世の中をなんとかして欲しい、そんな意識が劇場政治を生む。何も変わっていないのである。というわけで、私は都議選の結果を見て、気分は決して悪くないけれど、期待の高まりもない。悲観主義者はあいかわらず悲観主義者なのであった。