国債を海外に・・・!?

 昨日の毎日新聞、「浜矩子の 危機の真相」という記事を興味深く読んだ。この場合、「興味深く」は、やれやれ困ったものだ、という感慨である。
 私も気付いていなかったのだが、8月21日の日本経済新聞に、「日本国債の販促 海外向け87%増」という記事が出たそうである。その記事によれば、目下、財務省国債を海外投資家に必死になって売り込んでいて、昨年そのために海外投資家と面談した回数が、一昨年比で+87%146件に達したらしい。
 浜氏は「とても小さな記事」だったと書いている。浜氏が「目を引かれた」と書くとおり、これはなかなか重大な話で、日経以外の新聞が報道しなかったとしたら、それもまた由々しき問題である。そしてその日経でさえ、扱いは「とても小さな」ものだったとは!
 言うまでもなく、日本は1000兆円を超える天文学的借金を抱えているが、それを是認する人々の極めて重要な論拠は、日本の国債はそのほとんどを日本人が買っているから、というものである。ウィルスや寄生虫が、自分の住処を失うと困るので、宿主を攻撃しすぎないようにするのと同様、自分の国を危機に陥れようとする日本人はない。だから、日本人によって買われている国債は安全だ、というわけだ。日本政府の借金が増えても、国債を買っている日本人の資産が増えているから、国全体としては赤字になっていない、という凄い意見も聞く。ともかく、それらは全て、国債の大半が日本人によって買われているという事実に基づく。
 もっとも、最近は、国債の多くを買っているのが日銀である。日銀という政府の一部のような所が国債を大量に買い、日銀から政府に流れたお金が、市場に出る。私のような経済学の心得のない者には、それでなぜインフレが起きないのか理解できない。いや、それどころか、2%のインフレ目標(←この必要性もいかがわしい)すら達成できない。
 ともかく、浜氏は、「日本の国債市場は、さながら一度そこに紛れ込んだら、二度と再び漕ぎ出ることの出来ない無風の魔の海のごとし」と指摘し、日銀が「自らの財務状態を毀損しながらの魔の海作戦には、おのずと限界がある。だからこそ、財務省は懸命になって国債の「保有層の多様化」を促そうとしているわけだ」と述べる。
 経済学に心得のない私でも、今の状態が非常に不健全であることはよく分かる。いや、このような行き詰まりに陥ることは始めから分かっていた。そして、日銀や政府の中枢にいる頭のいい人たちの考えていることは分からんなぁ、とぼやいていたのである(→「破綻は早い方がいい」)。
 それでも、現状を打開するために国債を海外に積極的に売ることは禁じ手だ。姑息な方法で、悪の根本、つまり、ルーズな支出、特に土木支出をこそ改善しなければならない。そして、更にその根っこにあるのは、経済成長は永久に継続可能だ、という、これまた不可解な前提である。何もかも間違っているのに、円満解決を求めるのは虫がよすぎる。
 にわかに破廉恥きわまりない衆議院解散論が強くなってきた。最近の世論調査では、安倍政権の支持率低下に歯止めがかかり、回復傾向にあるという結果が出ている。支持率低下の原因となった閣僚はすげ替えられたが、加計学園森友学園の問題は何も明らかにならないまま、曖昧にされ、北朝鮮脅威論による政権安定への期待などあり、加えて民進党が自壊しつつあるという願ったりかなったりの状況があってのことだろう。だが、国民の意識の低さ、物忘れの良さの結果でもある。これが私には信じがたい。
 そうこうしているうちに、にっちもさっちもいかなくなる。以前も書いたことだけれど、破綻は少しでも早いほうがダメージは少ない。もはや十分手遅れなのだけれど、それでもやはり、破綻は少しでも早い方がいいのである。