「文明の崖」を流行語大賞に!

 11月5日の河北新報で、「米『進む温暖化 人類原因』」という記事を見付けた。3日に、全米気象報告書なるものが公表され、そこには「地球温暖化は進行しており、人類の活動以外の原因は見当たらない」と書かれているのだという。これはアメリカの海洋大気局に設置された諮問委員会が作成したものであり、アメリカ政府による公式の発表だ。記事によれば、大統領はその指摘に不満で、8月に15人の専門家からなるその委員会を解散させた。従って、内容は大きな変更を余儀なくされるとの憶測が飛び交っていたが、結局、政府高官がほぼ無修正での発表に及んだのだという。トランプ政権下にも、まだそんな気骨のある「政府高官」がいたんだ、と少し感動する。もっとも、暢気に感心している場合ではない。大統領が外遊中ということもあってか、この発表についてどのように反応したかは伝えられていないが、もしかすると帰国早々お得意の「You're fired(お前は首だ)!」が聞こえてくるかも知れない。
 記事にも書かれているが、言うまでもなく、大統領は、温暖化と人間の活動との関係ははっきりしないとして、オバマ政権下で決定された温室効果ガス排出規制を撤廃し、パリ協定から脱退した。環境保護局や内務省のHPからも温暖化に関する情報を削除した。だから、政府高官が発表した報告書について、メディアが「矛盾している」と批判するのも無理はない。が、もちろんその批判は、報告書に対するものではなく、政策についてのものだろう。
 そうこうしていたところ、世界気象機関(WMO)が今年の世界の平均気温が観測史上最高を更新するという見通しを発表した。同時に、1〜4月の北極の海氷面積について「記録的な小ささ」だったこと、2016年に世界で2000万人以上の人が洪水やハリケーンなどの気象災害で避難生活を余儀なくされたことも指摘しているという。
 大気中の二酸化炭素が増え続けているわけだから、何も不思議なことではなく、むしろ当然である。仮に、年によって何かの事情で多少下がることがあったとしても、それで喜ぶべき要素は何もない。私が以前から繰り返し言っているとおり、温暖化対策は一刻を争う最大にして危急の課題である。虫のいいことを言っていてはいけない。大切なのは、経済活動の急激な失速を回避することではなくて、それによるダメージを人類全体で受け止め、食べられない人が出ないようにすることである。
 とは言え、現在開かれているAPECの議論を見ていると、相も変わらず、いかにして経済活動を活性化させてもうけるかという以外の価値観を見出すことは出来ないのだから、人類の将来は暗い。
 そう言えば、10日の新聞では、今年の流行語大賞の候補となっている言葉30語が発表されていた。「忖度」「インスタ映え」などという私でも心当たりのある候補もあれば、「刀剣乱舞」や「うつヌケ」といった、どこで流行していたの?という言葉もある。
 私は、おそらく私の造語である「文明の崖」(2013年以来このブログにたびたび登場するが、例えば最近では→こちら。初出は→ここ)が、大賞をいただけるほどの流行語にならないかな?と思っている。私が「文明の崖」と言うのは、第一に石油の枯渇(稀少化)だが、温暖化がいよいよ直接的に生命の危機をもたらすとほとんど全ての人に自覚される時をも含む。つまり、文明を原因とする破滅の一切が「文明の崖」なのであり、それは私が「崖」と言うとおり、そこに至るまでの道のりはさほど短くない(産業革命からの250年を「長い」と言うか「短い」と言うかは比較の対象次第だからね。ただ、目先のことばかり考えているほとんどすべての人々からすれば、それは十分に長いと言える)ながら、ひとたび自覚可能な現象として現れ始めるや、もはや回避は不可能で、ごく短期間で正に破滅的な大ダメージを与えるものである。それが目前に迫っていることを人々が自覚することが、温暖化回避のための第1歩である。「文明の崖」が流行語大賞をもらえる世の中は明るい。だけどやっぱり、・・・ダメだよなぁ。