そうだ、この人がいた!

 たびたびであるが温暖化の話。
 11月11日付け河北新報に「『化石賞』日本がダブル受賞」という記事が出た。小さなものである。それによれば、世界の環境保護団体で組織する「気候変動ネットワーク」は、地球温暖化対策を妨げている国を意味する「化石賞」に、日本と先進国を選んだ。日本は先進国にも含まれるため、「ダブル受賞」というわけだ。先進国に含まれる日本が、単独でも受賞することになったのは、石炭火力発電所原子力発電所の建設を世界に広げることを、過日来日したトランプ大統領と合意したから、とのこと。では、アメリカはなぜ単独指名されなかったのか?それは書かれていない。日本以上に「言っても無駄」ということ・・・のわけないか?ともかく、金、カネ、かね。本当に恥ずかしい。

(後日の注:アメリカは日本を上回る「特別賞」を単独で受賞したらしい。当然だな。)

 11月14日付け毎日新聞「火論」欄で、客員編集委員・玉木研二氏は、温暖化を恐竜が絶滅する原因となった隕石になぞらえ、「このままでは避けがたい、地球規模の近未来の変化と惨状は見えてきた」と書く。新聞の論調としては最上級の厳しさである。が、まだまだ甘いな、と思っていたら、18日にアル・ゴアアメリカ副大統領の大きなインタビュー記事が出た。続けて、翌19日には、朝日新聞土曜版beでも「フロントランナー」という2面にわたる大特集でアル・ゴア氏を取り上げていた。
 偶然ではない。現在来日中なのだ。彼がプロデュースした映画「不都合な真実2」の劇場公開に合わせての来日らしい。まず毎日新聞で顔を見た時、あっ、そうそう、この人がいた!と自分が彼のことを忘れていたうかつを攻めると同時に快哉を叫んだ。世界の温暖化への取り組みが非常に甘いと感じる日々、この人こそが、最も有名で、行動力のある大人物であると思い出したのだ。環境問題への取り組みで、2007年にノーベル平和賞受賞。かつての佐藤栄作は言うに及ばず、アウン・サン・スーチー女史もロヒンギャへの対応で化けの皮がはがれ、オバマ大統領も反核問題では尻すぼみに終わってしまったなど、人選に怪しさの残る平和賞である。その中において、この人はその後も期待を裏切っていない。
 毎日の記事で面白かったのは、パリ協定からの離脱を表明する前に、トランプ氏と環境問題について会談した時のことについてのゴア氏のコメントだ。

「もしかしたら(問題の重要性に)気付くんじゃないかと思ったけど、それは間違いだった。科学に敬意を払い、大自然の声に耳を傾ける人なら説得できるかも知れないが、もうこれ以上やっても成功しない。むしろ安倍晋三首相にお願いしたい。」と冗談交じりに失意を口にした。

 ここには、環境問題に正面から向き合える人の条件が明示されている。「科学に敬意を払える人」「大自然の声に耳を傾けられる人」だ。科学者が危険性を指摘した時に、その意見を尊重し、自然の声にも耳を傾けるという謙虚な姿勢を持つ人でなければ、いくら説明しても環境問題の深刻さには気がつけない。残念ながらトランプ氏はそれらの条件に合わなかった。話し合いによって科学や自然に対する謙虚さが生まれたりはしないとして、そもそも謙虚さを持つ人間であれば、話し合わなくても分かるではないか。だとすれば、話し合うことの意味って何なんだろう?
 「冗談交じりに」というのは記者の言葉である。ゴア氏の言葉のどこに冗談が含まれるのだろう?自分にはトランプ氏を翻意させられなかったので、安倍氏に頼むしかないというのは、安倍氏にその可能性があるとすれば「冗談」にはならない。安倍氏がその任にまったく堪えない人だから「冗談」になる。安倍政権にトランプ氏の説得など出来るはずがないことを知っていることは、次のような発言にも表れている。

「日本は納税者から集めたお金を石炭を燃やして作る燃料に投じることをやめてほしい。自国だけでなく、インドネシアの石炭火力発電所の開発に税金を投入しようとしていることはショッキングだ。」

 これで話は「『化石賞』日本がダブル受賞」に戻る。まったく困った話である。金、カネ、かねの安倍政権、それを支える国民。日本人は金、カネ、かね。せめて他の国に迷惑がかからなければいいのだけれども、環境問題はそうもいかない。改めて他国に恥ずかしい。大切だよなぁ、科学的知識(学問と一般化していいかも)や自然に対する謙虚さ。
 まだ宮城県内では上映が始まっていないようだが、行かなくちゃ、「不都合な真実2」。本当はその映画を見なければならないのは、その映画を見たくない人たちなんだけど・・・。