和田岬線

 塩釜高校は昨日が離任式。どこの学校でも同じだと思うが、離任式の午後は、職員室の机の移動と大掃除である。しかし、塩釜高校が普通の学校と違うのは、キャンパスが2つあって、異なるキャンパスへの移動は転勤と同じ作業になる、という点である。だから、私が今まで勤務していた学校のように、机そのものを動かすことはせず、全員が荷物の移動をする。毎年必ずこのような作業があることが分かっていると、余計なものをため込まないというメリットはあるが、それでもやはり作業としては大変だ。東西両キャンパスの間を、段ボール箱を持って移動している教員の姿を見ながら、生徒が「あ、○○先生西(3年生担当)になるんだ」とか、いつまでも机を片付けない教員を見ては、「△△先生は東に残るみたい」とか、いろいろな噂をしている。面白い。ふふ。


 さて、六甲山全山縦走が1日半ほどで終わり、月曜日に訪ねる予定だった姫路のK先生を、日曜日の夕方に訪ねたため、月曜日がぽっかり空いた。
 この日も天気はいいし、何をしようかなぁ、と思って、京都に行くことにした。大好きな阪急電車にたくさん乗れる上、桜はおそらく満開だし、多少人は多いかも知れないけど、京都なら行ってみたい場所を探すのも簡単だ。
 だが、よく考えてみると、私が神戸に宿泊したのは初めてである。昔自宅があったのは同じ兵庫県瀬戸内の龍野市(現たつの市)で、そこから神戸にわざわざ泊まりに行くなんてあり得ない。その後は、神戸に用事がある時には大阪泊まりとなった。だから、元々兵庫県民だったとは言え、神戸は案外よく知らない。観光地として有名な北野の異人館街さえ、実は訪ねたことがないのである。今回、神戸駅に近いホテルに泊まり、ぶらぶら三宮まで歩いたりしながら、兵庫県庁や元町の南京町(中華街)を初めて見た。
 京都に行くとは決めたものの、駅へ向かって歩き始めたところで、そうそう、もう一箇所、JR和田岬線を乗りに行こう、と思いついた。
 「和田岬線」は通称である。行き止まりの盲腸線であるため、独立感が漂い、それ故に「和田岬線」などと呼ばれはするが、実は山陽本線の一部である。宮城県で言えば、岩切〜利府が本線から枝分かれしていながらやっぱり東北本線だ、というのと同じである。兵庫駅から和田岬駅まで、距離はわずか2.7㎞。途中に駅はない。和田岬駅周辺の大工場(三菱電機三菱重工など)に通う人のためだけに走っているようなものなので、朝夕の通勤時間帯以外は列車が走っていない。平日は、朝に7本、夕方に10本の列車が走っている。なぜ朝より夕方の方が多いのかは分からない。会社に行く人よりも帰る人の方が多い・・・なんて、あるわけないのに・・・。そして、兵庫駅発を基準にすると9:10から17:16まで列車はない。土曜日にはそれが午前6本、午後7本となり、休日は朝夕1本ずつ、1日で2本となる。この辺の事情は、横浜の鶴見線(→を訪ねた時の記録)ととてもよく似ている。そのため、今までなかなか乗る機会が無かったのである。
 兵庫駅和田岬線のホームに向かうと、入り口の所に改札口がある。切符を入れると出てこない。よく見ると、「切符はここで回収となります」というようなことが書かれている。ははぁ、なるほど、この後、駅はひとつしか無いわけだから、この改札を通過したということが、終点までの料金を払っているということであり、もう切符は必要ないわけだ。長い通路の先に1本だけのホームがある。
 車両は水色の懐かしい103系(昔の山手線型。仙石線でも走っていた)。堂々の6両編成だ。私がホームに行った時は、前の電車が出た直後で閑散としていたが、やがて電車がホームに入ってきて、出発する頃には定員を遙かに超える人が乗っていた。
 川崎重工鉄道車両工場やノエビアスタジアムヴィッセル神戸のHG)を眺めたり、兵庫運河を渡ったりしながら、ほんの3分走って着いた和田岬駅は駅舎がない、やはりホーム1本だけの駅であった。帰りの切符を買おうと思ったが、自動券売機さえない。なんとかなるのだろうと思って引き返すと、兵庫駅和田岬線改札口の所に、和田岬発の切符を売る券売機が設置されていた。なるほど、確かにこれで間に合う。
 改札のシステム以外、特に見るべきもののない電車ではあったけれど、宿題を一つ果たしたような気分にはなれた。