急激な変化は「吉」と出るか?・・・部活動ガイドライン(1)

 今年3月に宮城県教育委員会は「部活動での指導ガイドライン及び部活動指導の手引き」(以下【確定版】)という文書を出し、それが今月5日の職員会議で紹介された。休養日の設定、活動時間の制限ということが非常に大きく詳細に取り上げられている。その後、最初から最後まで丁寧に読み、私はそれが昨年3月に出された「部活動での指導ガイドライン(暫定版)」(以下【暫定版】)に基づくものであることを知った。あまりにも大きく変わっているので、当初そのことに気がつかなかったのだ。
 今年2月に、私はスポーツ庁有識者会議が、中学校における部活動の制限を高校にも準用するべきだと答申したことについて、いささかの危惧の念を書いた(→こちら)。今回出された確定版は、スポーツ庁が出したガイドラインを受け、わざわざそれを原則として高校、更には文化部にも適用するよう書き込んでいる。
 昨年の【暫定版】と今回の【確定版】がどれくらい違うかということを、目次を目安として見ておこう。(両文書とも県教委のHPで一般に閲覧可能。ただし、暫定版は既に削除された模様。)

【暫定版】             
1 適切な休養日設定   2頁(計画書様式含む)

【確定版】
「部活動での指導ガイドライン」として独立   6頁(同2種類含む)


【暫定版】
2 指導者(顧問・外部指導者)として

【確定版】
「部活動指導の手引き」の1 指導者として


以下、【暫定版】の3「体罰等の禁止」が【確定版】の2に、同4「指導体制の構築」が3「学校組織全体での指導」に、同5「活動計画の立案」が4に、同6「活動計画の立案」が5に、同7「事故防止対策等」が6に、同8「指導者(顧問・外部指導者)間の連携」が7「指導者間の連携」に、同9「地域(スポーツ少年団等)との連携」が8に繰り上がっている。名称の変わった章が2つあるが、それらの章の内容・表現が特に大きく変わったというわけではない。章に関係なく、【確定版】で追加・削除された主な文言は次のとおりである。

・適切な休養を取りながら、短時間で効果が得られる活動を実施しましょう。(追加)
・指導者は、部活動の指導において、生徒の安全・安心の確保を徹底しましょう。(追加)
・立案した活動計画は、管理職の承認を得るとともに、校内で情報を共有できるような体制を作りましょう。(太字部のみ削除)

 一見して、安全確保と活動時間制限がよりいっそう重視されるようになっていることが分かる。【暫定版】第1章をわざわざ独立させたことと合わせて考えると、この1年間における活動時間制限重視への変化の大きさは驚くほどだ。
 一方、この数十年、ひたすら管理職の権限を大きくする方向に動いていた県教委が、部活動の活動計画については権限を割り引く方向に文言削除をしているのは意外だ。そんなことやりきれるわけがない、形式的に権限を定めて責任がより重くなっては面倒だ、ということのように思う。
 【暫定版】では「休養日設定確認表」だけが所定様式として付けられていたのに対し、【確定版】では「月間計画」なるものの様式も付けられ、各日について何時から何時まで、何時間部活動をするか申告することを求めている。これは、「掛け声だけではありませんよ。実効を求めますからね」ということだろう。年度初めには県教育委員会名で保護者に対し、「『部活動での指導ガイドライン』について」という文書を配布することも通知された(今日配布)。その中で、太字、枠囲みで強調されている確認点は以下のとおりだ。


・学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける。
 (少なくとも平日に1日、土曜日及び日曜日に1日以上)
・長期休業中は、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
・1日の活動時間は、平日2時間程度、休日3時間程度とする。
・朝練習については原則禁止とする。
*大会やコンクール等の前の時期は「ハイシーズン」として活動し、その分、それ以外の時期に休養日を十分に確保する。


 こんな話が校長からあった時、議論の火が消え、通常は意思表示さえほとんど行われないような静かな職員会議で、珍しいほど明瞭な、どよめきともため息ともつかぬ反応が広がった。「こんなこと本当に出来る(する)のか?」「え?まずいんじゃないの?」といったような反応だったと思う。「私たちのワーク・ライフ・バランスのために文科省も県教委もよくやった!」というような反応があったようには思えなかった。(続く)