図々しいぞ、朝鮮半島非核化

 米山隆一新潟県知事が、女性問題を理由として辞任に追い込まれた。自民党はさぞかし喜んでいるだろう。原発再稼働へ向けて動きやすくなった上、自民党の様々な不祥事から国民の目をそらさせることも出来るからである。
 確かに、買春はほめられたものではない。灘高から東大医学部、医師にして弁護士というおそるべき経歴が、今回の事件によって泥にまみれた。アホだなぁ、とも思う一方で、独身の寂しさや人間としての弱さに思いを致しては、ある種の同情や共感も感じてしまう。
 目立つ立場の人は、普通の人に比べて社会的影響力が大きいから、道徳的に完全でなければいけない、というのは、あながち的外れな意見でもないが、有名人と言えども人間である。少なくとも、政治という完全に「公」の世界の出来事に比べれば、道徳、特に性の問題は「私」的要素が強い。評価は慎重、抑制的であるべきだ。
 米山知事の乱心など、安倍政権下で行われてきたような憲法破り、隠蔽などに比べれば、まったく取るに足りない問題だと思う。と言うわけで、新潟県知事が涙ながらに記者会見する一方、より大きな悪に関わり、国のあり方を根底からひっくり返そうとしているとしか見えない首相が、例によって卑屈な笑みを浮かべながら、もしくは得意満面でアメリカに行っているのが不愉快である。アメリカ大統領との会談でポイントを稼げば、森友・加計問題なんて霞んできて、支持率だって回復するさ、と思っているに違いない。
 不愉快と言えば、朝鮮半島の非核化である。北朝鮮に核開発を放棄させ、朝鮮半島を非核化することについては、ロシアを含めた常任理事国も見解が一致しているようだ。もちろん、私は理想論として核を地球上から無くすべきだと考えてはいるのだが、それはあくまでも理想論である。善良なる核保有国が核を放棄し、図々しい悪徳国家が核を保有したら、それこそ大変なことになる。残念ながら核の問題についてはパワーバランスに頼らざるを得ない(→過去の参考記事)。その場合、なぜアメリカやロシアは核の保有が認められるのに、イランや北朝鮮はダメなのか、というのは難しい問題である。
 せめて、それらの大国に大国としてふさわしい「良識」を感じることが出来ればいいのだが、アメリカ大統領は使い勝手のいい小型核兵器を開発すると宣言し(2月2日)、ロシアはロシアで、新兵器の保有を誇示してアメリカに圧力をかけた(3月1日)。ほとんど正気の沙汰ではない。そこでは大国のエゴがむき出しになっていて、本当は核兵器を放棄したいのだけれど、世界の安定を実現させるためのやむを得ないパワーバランスのために保有しているのだ、などというしおらしい考え方の存在は、微塵も感じることが出来ない。断じて米ロは「善良なる核保有国」ではないのである。そんな中で、日本のような子分までが一緒になって、これだけ高圧的に北朝鮮に対して非核化を求めれば、北朝鮮は反発するのが当然である。私が金正恩なら、「お前ら何様だ!」と声を荒げるかも知れない。二大国、もしくは中国を含めた三大国に従順に服して、その核の傘に入るという選択肢だけを強要するのは、それはそれでパワーバランスではあるのだが、それら超大国も最後は自分だけを守るだろうということを考えた時、なんとも釈然としない。
 私のように考える人がいるのかいないのか、どれくらいいるのかは知らないけれど、このような存在を放置して、強引に事を進める(非核化へ向けて圧力をかける)と、世の中に歪みが溜まってきて、ISのような組織が生まれたり、テロリストが横行したりするようになる。アメリカ大統領と日本の首相は、今日は楽しいゴルフだったそうだ。