大川小学校裁判と石巻市議選

 どれほどの価値があるかはわからないのだが、メモ的に記録しておこうと思っていたことがあるのをすっかり忘れていた。5月20日に投開票が行われた石巻市議会議員選挙である。
 直前に、大川小学校の控訴審判決というのが出て、敗訴した市はそれに対して上告するかどうかでもめていた。重要案件なので、議会で検討するのが当然だが、上告に賛成するか反対するかがその直後の市議選の結果に直結する可能性がある。市議選への立候補を予定している議員は、有権者の顔色を伺うのはもとより、市長が専決してくれることを期待しているという情けない話も伝わっていた。
 ところが、翌日までには開票結果が出たものの、では、上告への賛否は選挙結果に影響したのかどうか?という検証にはお目にかかった記憶がない。事前にずいぶんあれこれ言われた割には不思議な話である。
 もしかすると、単に私の視界に入っていないだけかも知れないが、さほど難しい話でもないので、私なりの検証を書き留めておく。
 上告するか否かの採決の時にいた30人の議員の中で、今回の選挙にも出たのは24人である。その中で、上告賛成と反対の議員各1人、合計2人が落選した。あいこである。しかも、面白いことに、落選した2人は会派が同じ(ニュー石巻)である。
 当選したのは賛成派が12人、反対派が10人。ただし、反対して引退した公明党所属議員の後任は当選したので、それを継続扱いにすると反対派は11人。更に、採決に欠席して引退した共産党所属議員というのがいる。この人は、間もなく引退だからといって欠席したのではなく、2年前の控訴の時にも欠席している。もう一人の共産党議員は反対だし、共産党は県レベルでも上告断念を知事に訴えているから、後任の新人も反対派だと考えることが出来る。すると反対派は12人となり、賛成派と反対派の数は一致する。
 次に、当落に関係なく、賛成派の得票数を合計してみる。すると23,876票で、1人あたりだと1,837票となる。反対派を11人と考えて、同じ作業をすると1,8825票で、1人あたりだと1,711票となる。公明・共産の新人各1人を加え、反対派を13人と考えると、22,855票、1人あたり1,758票となる。どちらも13人となると、「1人あたり」は必要ないので、合計得票を比較してみると、賛成派が反対派よりも1,021票多い。う〜ん、これを多いと見るか少ないと見るかは悩ましいところだ。
 しかし、悩ましいということは、たいした差ではないということである。採決の時には賛成16人、反対12人、欠席1人だったので、欠席は無視して賛成/反対を比で考えてみると、裁決時の人数が16/12=1.33、市議選の得票数が23,876/22,855=1.04である。
 これをもって、反対派が支持された(=賛成派が批判された)などと考えるのは早計である。なにしろ議員の数というのは少なく、それ故に民意を集約するには好都合なのであるから、数万の票数と同じに考えることはできないのである。私にはほとんど誤差の範囲と見える。ちなみに、得票数と採決数が比において同等となるのは、賛否が14対14の同数となり、議長裁決により、例えば15/14、比が1.07になった場合である。
 というわけで、大川小学校裁判の上告と市議選は無関係か、市議会での採決結果がほぼ忠実に民意を表していたかどちらかである。混迷は続く。