非知性的存在

 昨日の新聞各紙で、麻生財務大臣が講演会で、「(新聞を)読まない人は全部自民党(の支持)だ」と述べたことが報じられた。誰を相手にした講演か(主催者は誰か)は見つけられなかった。昨秋の衆院選で、30代前半までの若い有権者には自民党に投票する人の割合が高かったことを意識しつつ、安倍政権への批判が目立つ新聞報道への不満を漏らした発言だろう、と解説されている。また、「インターネットや放送、通信を当たり前のように使いこなせる若い世代の自民党支持率が高いことが、ものすごく大事だ」との発言があったことも紹介されている。
 「若い世代は昨秋の衆院選自民党投票率が高かった」「若い世代は新聞を読まない人が多い」、これら2点は事実である。だが、それらを結び付ける時に、「新聞は偏向しているくだらないメディアだから、賢明な若者は読者になることがなく、インターネット情報に基づいて自民党に投票する」という論理を組み立てるとなると、これはびっくり仰天。
 「新聞を読んで真実が伝われば自民党支持にならないというのは、ある意味でその通りだ」という共産党・小池書記長のコメントは気が利いている。しかし、私なら「インターネットのフェイクニュースを喜ぶバカな若者は、新聞を読むだけの知性がないから、自民党に投票する」と理解する。同時に、「そのおかげで、知性の点でも人間性の点でも問題の大きい人物が財務大臣や総理大臣にもなれる」とも付け加えたい。
 同じデータでありながら、その意味をどのように理解し、それを使ってどのような論理を組み立てるかは、これほどまでに大きく異なる。それは往々にして起こることなのだけれど、今回の財務大臣発言はその典型と言ってよい。
 昨日発表された毎日新聞世論調査によれば、安倍政権を支持する人は5月末と比べて5ポイント増、支持しない人は8ポイント減であった。自民党支持率も4ポイント増である。公文書管理の問題、森友・加計に関する虚偽答弁の問題などなど、人間の信頼に関わる大きな問題が沢山ありながらこれである。やはりどう考えても、「インターネットのフェイクニュースを喜ぶバカな若者は、新聞を読むだけの知性がないから、自民党に投票する」「そのおかげで、知性の点でも人間性の点でも問題の大きい人物が財務大臣や総理大臣にもなれる」である。昨今の自民党反知性主義だとよく言われるが、非知性的存在と言った方が正しい。