薪バイ

 先週末の2日間、仙台一高井戸沢小屋というところに行っていた。かつて同校の山岳部顧問をしていた時には、自分のホームとして、年に数度も行っていた場所だが、ふと気がつくと、前回がいつだったか思い出せないくらい久しぶりだ。2〜3年前の冬が最後かもしれない。
 8月の第1土日は「薪バイ」という行事をすることが、慣行で決まっている。山岳部のOB組織である「山の会」が主催だ(とは言っても個人の寄せ集め)。何かと不都合で、この行事に参加するのも本当に久しぶりだ。
 「薪バイ」というのは、「薪アルバイト」の略で、意味の分かる日本語にすると「薪運び」ということだ。徒歩20分くらいの車道(蔵王エコーライン)から、冬に燃やす薪を背負子で担いで、せっせと小屋に運ぶ。今年は、水場に至る道の刈り払いとか、トイレの側壁修理などもあった。要は、山小屋の補修作業をまとめて行う日なのである。
 集まったのは、大人が12人、子供が5人であった。各自能力と体力に応じて作業を分担し、せっせと汗を流す。私は1日目(午後始まり)、登山道に作ってあるステップの止め杭の飛び出ているものを、抜いたり改めて打ち込んだりする作業をしたり、登山道にかかっている邪魔な枝を切ったりという作業をした。そして、名前通りの「薪バイ」を2往復。2日目は、「薪バイ」を2往復。雲行きが非常に怪しくなってきたので、ここまでやって午前9時にお開きとなった。私が運んだ薪の量は100㎏といったところか。
 とにかく土曜日の夜に飲み過ぎて、2日目はつらかった。山の世界では歴戦の強者みたいな人が集まってきて、自分の得意料理をふるまうので、ついつい食べ過ぎるし、食べ過ぎるということは飲み過ぎるということなのである。イワナの塩焼き、タンドーリ(インドの壺状の窯)で焼かないタンドーリチキンの味がする焼き鳥、豚肉で作ったシシカバブ(?!)、自宅の畑でとれた大量の新鮮なキュウリの浅漬け、トマトと生ハムのマリネなどなど・・・。私は・・・?情けないことに、某君の家族に便乗で、一緒に豚汁の材料を買いに行き、釣り堀にイワナニジマスを釣りに行くのに同行したくらい。ま、結局のところ、何もしていない。ただただ、6時間にわたって飲み食いしていただけである。
 かつて薪バイは、私にとってお仕事の一部だったわけだが、今や何の義務も義理もない。集まった私以外の11人(大人)にしても同様である。ただ、先人が建てて50年近くになる小屋を少しでも長く使えるよう大切に守っていきたい、仲間と集まって一緒に何かをするのが楽しい、ただそれだけで、ぞろぞろと集まってくる。家族ぐるみで、子供まで連れてくるというのもいい。損得も、社会的地位も関係ない。それがいいのだな。だからこそ、お酒も進むのである。
 実働時間が短かった割に作業もはかどり、頭は重たいけれど、気分よく下山したのであった。今週はもうお酒いらない。