「あかつき」復活と宇宙飛行士の教訓

 土曜日が授業参観とPTA総会だったので、今日は代休。我が家の桜は満開だし、特に予定もなく、よく晴れて最高の休日となった。海は真っ青。2時半過ぎに「宮城丸」が工業港方面から漁港方面へと走って行った。ああ、水産高校航海類型の遠洋航海実習が間もなく始まるのだな、との感慨にとらわれた。
 拙著(→こちら)の3回目の校正が来ていて、昨日も今日も一日中、校正作業に没頭していたのだが、今日の午後は気分転換も必要と、久しぶりで牧山に走りに行った。

 3月末以来、右足のふくらはぎに肉離れと思しき痛みがあって、走る量をセーブしていたところ、4月6日からはインフルエンザに伴う不調で走れなくなった。先週火曜日(16日)から走るのを再開してはみたものの、すっかり体(特に心肺機能)がなまってしまい、信じられないほど体が重い。学校を起点に、キロ6分というペースで加瀬沼・多賀城政庁跡を回る8.5キロコースを走りに行ったのだが、本当に青息吐息だった。火、水、金、土と走って、少しは回復してきたような気がしたので、今日は腹をくくって牧山(13キロ、累積標高差330m)に行った、というわけだ。
 石巻で21℃を超えたという今日、風もそよそよと気持ちよく、思いの外快適に走ることができた。牧山、栄存神社社務所の隣に咲く枝垂れ桜が絶品!我が家にいてもだが、ウグイスの鳴き声も美しく、モミジやケヤキも芽吹き始めていて、日本の春の美しさを満喫できた気分だ。
 話は変わる。
 先週の木曜日(18日)、4月15日に録画してあったNHK「逆転人生 金星探査あかつき 執念のカムバック」という番組を見た。メインエンジンの破損により、金星の周回軌道に入ることに失敗して、太陽を周回するようになってしまった金星探査機「あかつき」を、6年後に金星に接近するタイミングで補助エンジンを想定外に長時間噴射し、金星の周回軌道に入れることに成功した、という物語だ。
 以前から私は、宇宙空間における軌道計算というものに関心がある。全てのものが相対的に動いていて、不動の原点が設定できない中で、惑星や探査機の軌道というのはどのように計算し、表現されるのであろうか?不思議で仕方がない。学問として、最も難解で神秘的な分野のように思える。
 「あかつき」が金星の周回軌道に入るのに失敗し、太陽の周りを回り始めてしまった時、次に金星の軌道に入ることのできる可能性を見出したのは「計算」だ。ある女性が、膨大な量のシミュレーションをすることで、その可能性を見出したという。その計算は、あの広大な宇宙空間を秒速何キロというレベルの速度で動いているにもかかわらず、何年何月何日何時何分何秒に千何百何十何秒補助エンジンを噴射すれば正しい軌道に入れる、というデリケートなものだ。この計算の仕組みについて、一度専門家の話を聞いてみたいものだな、と思う。
 それはともかく、番組には宇宙飛行士の山崎直子さんがゲストとして出演していた。彼女は次のような話をしていた。

「宇宙飛行士の訓練の90%は非常時対応です。しかし、実際に起きるトラブルというのは、不思議なことに、必ず訓練ではやっていないようなことなんです。」

 ははぁ、さもありなん。そういうものだよ。
 先月私は、「防災」という問題について、例によっていじけた一文を書いた(→こちら)。しかし、山崎さんの話を聞いていて、やっぱり私の方が正しいな、と改めて思った。世の中では「ボーサイ、ボーサイ」とやたらうるさいが、「防災」を専門分野として特化すればするほど、硬直し、想定外への対応力は低下する。そして、宇宙飛行士の場合と同じく、実際に起こるのはおそらく想定外の事態だ。その時にどう対応するか、問われてくるのは柔軟な臨機応変の総合力である。
 先週金曜日には、宮城教育大学で、災害時に子供の命を守れる教員を養成する目的で「311いのちを守る教育研修機構」なるものが開設されたそうだ。まったく世の中はおめでたく、私には理解が及ばない。