狭い了見を克服せよ・・・冬季課外

 昨日に続き、「学年だより№32」を引用するところなのだが、いきさつが分からないと理解できないので、まず最初にそれを書いておく。
 今日と明日の2日間、「冬季課外」なるものが予定されていた。「やる」ということだけ決まっていて、具体的に何をするかは、日程が近づいてから学年で協議することになっていた。冬季課外のために、午前中は部活動も禁止だ。
 わずかに2日間である。まさか、英語や数学の問題演習をやったって仕方があるまい、という話は出たのだが、ならば何をするというアイデアも出ない。私が、大学に出前授業を頼んではどうか?と言った。社会貢献にもなり、宣伝効果も期待できるということで、今やどの大学でも、「出前授業」なるものをしてくれる(名称は「出張講義」「出前講義」など多少異なる)。大学の先生が来て、その専門分野の一番面白いところを語ってくれるのである(ラボみたい!)。ありがたいことに、経費は大学負担である。
 思うに、学習効果というのは、学ぶ側の主体性にかかっており、学ぶ側の主体性はモチベーションにかかっている。学びたいという意欲さえあれば、知識の詰め込みや問題演習なんて、自力でいくらでもできる、というのが私の持論。そして、モチベーションは社会に対する問題意識や、レベルの高い文化(学問・芸術など)にたいする憧れから生まれてくる。だから、わずか2日だから、というのではなく、課外だからというのでもなく、大学の先生に学問を語ってもらうというのは、本来、生徒にとって必要なことであるはずだ。
 1学年スタッフの中での合意はでき、「平居先生、講義の選択や手続きやってくれますか?」という進路担当者の依頼に応じて、東北工業大学に歴史的建築物の保存の話とエレクトロニクス研究の最前線についてという講義をお願いした。
 ところが、申し込みが多すぎて予定していた会場(定員60名)に入らなかったらどうしよう、という教員側の心配をよそに、申し込んだのは約360名中わずか( )名であった(←恥ずかしくて書けない)。
 これはゆゆしき問題だ。問題演習なら出るが、学問の話なら出ないとか、建築も電気も自分の希望進路と関係ないとかいう発想があるとしたら大変だ。正に目先の利益主義であり、狭い了見である。任意の講習なので、受講を無理強いする気は元々ないが、それでも、大学進学希望者だけでも過半数を占める中で、数十人さえが受講を希望しないのは異常事態だ。こんな発想では、今後の成長に期待ができない。もしかすると、今回の課外に誘導できるかどうかは、生徒の今後の成長を左右する分岐点だぞ、と大騒ぎをし、学年の会議を開いた上で、急遽、LHRを1時間つぶし、普通科(280名)だけではあるが学年集会を開いた。
 一応、1学年代表者の私が、いかにも年末だからというふりをしながら、4月以来これまでの「学年だより」の言葉を引きながら(印刷したものも配布)、私たちが生徒に対して入学以来何を求め、どのような働きかけをしてきたかを復習した上で、最後に、冬季課外への申込者が極端に少ないことを私たちがどのように受け止めているか、なぜこれがまずいことなのか、という話をまとめとして、受講を呼びかけた。40分弱の長いお話であった。日頃どおりなのだが、生徒はざわつきも眠りもせず、顔を上げて真剣そう(←本当に真剣かどうか知らん)に聞いてくれた。

 

(12月24日付け「学年だより№32」より②)

【義務は気楽でいい・・・?】
 冬季課外の受講者は少し増えた。「ほんの少し」である。来て下さる大学の先生には申し訳ないが、諸君の性質を見誤るとともに、この8ヶ月間の指導の問題、更には学年集会で諸君の心を動かせなかった私の非力・不徳を恥じることにした。
 ところで、先週、視聴覚室前の廊下に掲示してあったテーマ学習の成果を見せてもらった。限られた時間だったにもかかわらず、大半のレポートは字も内容も丁寧で、真面目に取り組んでいたことが窺われた。いい勉強ができたと思う。
 それらは、「総合的探求の時間」に義務として「やらされた」ものであった。私は「義務」が嫌いで、諸君にもよく「義務は人を育てない」と言うのであるが、それらを見ながらふと思ったのは、諸君は案外「義務」が嫌いではないのではないか?ということだ。考えてみれば、「義務」は、それに従っていれば済むという気楽さがある。しかし、それを真面目にやったとして伸びるかどうかは?だ。「義務」に従順というのは、受動的であることを意味するからね。今回のレポートをきっかけとして、様々な社会問題に対して自ら情報収集や思索ができるか・・・?今後が問われてくる。

 

(裏面:11月26日朝日新聞「『頼れそうな大人』SNS潜む悪意 子ども被害1800人 小学生は最多更新」を貼付。
平居コメント:スマホを持つことで勉強しなくなる、できなくなる。友人関係でのトラブルを起こす。加えて、この記事にあるように、事件に巻き込まれるリスクも高まる。昨日は、小学生の体力低下の原因としてすら指摘されていた。それでも大人は子どもにスマホを買い与える。私に理解できないのはそのこと。悪いのは犯人だとは言え、被害者もしくはその親に、私はあまり同情しない。気をつけてね。)