働き方改革(続の1)

 つい先日、教員の働き方改革について記事を書いた。しつこいのだが、あえて改めてその問題を取り上げる。
 昨日、中央教育審議会が、教員の残業時間を月45時間、年360時間までとするガイドラインの順守を柱とする働き方改革の方策を文科相に答申した。今日の新聞各紙は、当然のこと、その件に触れていたが、毎日新聞には、どうすれば残業時間が削減できるかということについての具体的な提言を載せていた。申し訳ないが笑ってしまう。こういうのを「机上の空論」というのである。まったくその典型とも言える例だ。
 ちょっと見てみよう。とりあえずは義務制(小中)だけが対象になっているので、部活のある中学校を対象として例が掲げられている。

1)出勤時間の適正化
 平日48分(7:27→8:15)×約200日=年間の削減時間約160時間
2)部活動指導員の活用
 学期中 年約120時間、長期休業中2時間9分×20日=約160時間
3)部活動ガイドラインの順守
 平日41分×43週、休日2時間9分×43週=約120時間
4)校務支援システムの活用
 平日30分×約245日=約120時間
5)校務の整理、サポートスタッフの配置など
 毎月5時間×12ヶ月=約60時間
6)担当授業数の軽減
 70コマ×50分×1/4=約15時間
7)学校長集金管理などの負担軽減
 平日5分×約200日=約15時間
8)学校行事の効率的な実施
 平日5分×約200日=約15時間

 まず、教員の平均的な出勤時間が7:27なので、それを8:15にさせろという。非常に不思議な話だ。やることがあるから早く行くだけである。やることがなければ、わざわざ早く行くはずがない。どのような仕事を減らすのかというのと同様に、出勤時間を遅らせろというのは無理である。このブログの読者の方はご存じのように、私は、毎朝、列車を降りてからのんびりと塩釜神社をひとまわりしてから出勤している。学校に着くのは、職員打ち合わせの30分前だ。それくらいの余裕がないと、その日やることの確認やら、どうしても直前にしかできない準備やらができない。もしも、塩釜神社を経由すると勤務開始の10分前にしか着けないなら、私でものんびり散歩なんかしていられない。
 よく言われる話、部活動指導員やその他のサポートスタッフを探すのは大変である。なぜなら、極端に中途半端なパートタイムで、それだけでは生活できないし、他の仕事との掛け持ちもできないからだ。特に、地方の学校は大変だろう。また、部活動指導員と意思疎通をする時間=労力というのが必要で、特に変な指導員が来た日には、自分でやってしまった方がまだいい、という話になる。
 校務支援システムというのは、成績の入力、勤務時間の管理、同僚との連絡のやり取りをパソコン内で行うためのシステムである。組合の交渉で県庁に行っても、教員の多忙解消という話題になると、必ず県の側からICTの活用という話が出る。ところが、私がデジタル音痴、またはデジタル嫌いだからかもしれないが、これが導入されてなるほど便利になった、楽になったと思ったことはない。たいていは、それを使いこなすのに四苦八苦の上、セキュリティの強化との関係で、幾つかの画面でいちいち違うパスワードを設定させられたり、定期的にパスワードの変更を迫られたり、少し作業が停滞して操作をストップさせると、改めてログインが必要になったり、とにかく面倒なのである。とても負担を減らせる伝家の宝刀とは思えない。
 担当授業数の軽減については、数式の意味がまったく不明。学校徴収金云々はどのようにして削減の見通しを立てたのか想像さえ不能。行事の効率的な実施というのは、おそらく危険だ。と言うのも、それは強引な行事運営や、行事の削減を意味すると思われるからだ。始業式・終業式、卒業式ならばまだしも、体育祭、文化祭といった生徒が企画・運営に携わる行事(生徒会行事と位置付けられていることが多いが、おそらく上の「学校行事」に含まれるだろう)は、往々にして、効率化がそのまま教育的効果を減少させることにつながるからである。上手くいかなくて考え込んだり、人間関係がこじれて悩んだり、といったことがあるから、行事は成長の契機になり得るのである。効率化させようと思えば、教員が指示・命令し、生徒に考える余地を与えないに勝る方法はない。(続く)