衝撃の年始(C・ゴーン編)

 年末年始の報道で、私にとって衝撃的だったのは、おそらく他の多くの人と同じだと思うが、保釈中のカルロス・ゴーン氏が出国(逃亡)に成功したことと、アメリカによるイラン軍司令官の殺害であった。多くの人が言及していることなので、私ごときが付け加えることがあるとも思えないが、あまりにも衝撃的だったので、少し触れておく。

 ゴーン氏が犯したと言われている罪は、しょせん日産という一企業内のお金の話で、もしかすると所得税の多寡に関わったりもするのかも知れないが、「日本人にとっての迷惑」ということを考えた場合、たいした罪には見えない。逃げた人の罪がその程度のものでよかった。一方、日本は、氏の出国によって、いかに出入国管理がデタラメかということを白日の下に晒してしまったことになる。大恥をかいた、というところだろう。ゴーン氏も悪いが、日本の水際管理も悪い。
 ゴーン氏の出国の方法については、連日様々な情報やら憶測やらが乱れ飛んでいる。今後へ向けての反省という意味では価値があるのかも知れないが、それらが解明されたところで、ご本人にとっては痛くも痒くもないだろう。ベイルートの豪邸で、優雅な生活をしつつ、日本での大騒ぎを楽しんでいるに違いない。近々、ご本人が記者会見を開くらしい。不謹慎だが、私は楽しみだ。
 ゴーン氏が出国の動機としている、いや、逮捕されて以来、これまでにもさんざん繰り返していた日本の司法に対する批判は、非常にまっとうなものである。私自身も、それらのような問題については、今まで何度となく書いてきた(→例1「推定無罪の原則について」例2「検察の不祥事」例3「志布志事件について」)。今回、ゴーン氏が出国したことで、彼の言動が更に大きく取り上げられ、日本の司法制度の問題点についても報道が大きくなり、それらについての検証と改善が行われるようになれば、痛い目に遭った以上の価値がある、と私は思う。ゴーン氏の出国を、その方法論に矮小化してはいけない。「逃亡だ、けしからん」ではなく、彼の話にも謙虚に耳を傾けるべきなのだ。(明日はイラン)