すったもんだの冬季課外

(1月8日付け「学年だより№33」より)

 穏やかな天候に恵まれたお正月だった。私は、80歳を過ぎた母親が年末に手足を骨折した都合などあって、仙台市郊外の実家でじっとしていた。特に事故報告も入っていないので、諸君はいい年末年始を過ごせたのだろう、と思う。

【すったもんだの冬季課外 報告】(→「すったもんだ」の具体的内容
 結局、東北工大や電気、建築分野に進む予定の3年生や、作文練習のために出なさいと強制された生徒、更には向学心に満ちた教員など、1日目は30人、2日目は25人ほどが出席した。出席した人は全員熱心で、得るものが大きかったようだ。
 2日間とも参加した人には、1日目の方が面白かったと言う人と、2日目の方がよかったと言う人がいたが、それは当然だ。ただ、それだって実際に聞いてみないと分からないし、面白いと思った方がこの後の人生でより大きな意味を持つとは限らない。なんだこんな話、と思いながら聞いていた話が、ある日突然フラッシュバックしてきて、自分の人生を変えるほどの力を持つことだって決して珍しくはないのである。
 ともかく、授業でやったことをいくら完璧に身に付けたって、教養としてはたかが知れたものだ。そのことはよくよく肝に銘じておくこと。
 3年生の感想の中に、「こんな講話が1~2年生の時にあったらよかった」というようなものが何枚かあったが、今年の1年生から類推するに、1~2年生の時の彼らが本当に自ら参加したかどうかは怪しい。「後悔先に立たず」ということわざは、後になってからでないと気付けない「人間」の性質をよく表す。スペースの都合で一つずつではあるが、1年生の感想を紹介しておく。
(1日目:建築史学)
 予想以上に面白い講演でした。フィールドワークがあり、建築は室内で図や絵を描いたり、話し合ったりするだけの学問ではないことを知りました。昔の建物に+(プラス)で新しい物を取り入れるのではなく、-(マイナス)で元の良さを見せる・・・私の知っている建築とは別のものでした。(中略)古い良さとして新しく知ったことは柿渋塗装です。柿渋が塗料として使われてきたことにも驚きましたが、木の良さである木目や色をよく見せるだけではなく、雨を防ぐこともできるとは、昔の人はどうやってその方法を見つけ出したのでしょうか?(中略)修復はただ直すだけではなく、これからにつなげていく、地域の魅力になる。建築史学は昔の建築の新しい未来を作る学問だと思いました。
(2日目:エレクトロニクス)
 いつも何気なく使っているPCやスマホ、ゲーム機などの構造や仕組みについて考えたことがなく、小さいデバイスの中に高性能で小型のコンピュータが搭載されていることを知り、とても驚きました。一番興味を持ったのはディスプレイについての話で、私たちがいつも見ているYou Tubeやゲームというのは、画面が流れるように動いている時に、とても薄いディスプレイの中で、光の方向などを瞬時に変えて、次々と映像を変化させていることを知り、改めて今の技術はすごいな、と思いました。私たちの身近で便利な物に対し、詳しく触れてみると、知らないことばかりで面白いと思いました。
(余談)
 学年集会等で文句は言ったものの、よくよく考えてみれば、大人、或いは教員だって、仕事で出ろと言われた研修会や講演会以外に自ら足を運ぶ人はとても少ない(行くと、参加しているのはたいてい老人ばかり)。それを考えると、高校生にさほど文句は言えないような気がしてきた。

 

(裏面:元旦の全国4紙+河北のコラム
平居コメント:私は元旦、必ず全国5紙(ここに掲載の4紙+産経)と河北に目を通す。11月の「新聞アンケート」自由記述欄に、「新聞ってひとつにまとめられないんですか?」という質問(意見?)が書かれていたが、言論の多様性が保証されてこそ、健全な社会は作られる。「多様性」は、生物が生き延びるためのキーワードでもある。)

*その他の記事は省略