少雪の蔵王

(2月10日付け「学年だより№38」より①・・・ただし、スペースの都合でかなり限られたことしかかけなかったので、こちらは本来書きたかった形で書く。実際の「学年だより」とは相当異なるがご容赦を。)

 少し真冬らしい気候となった週末、蔵王に行っていた。泊まったのは、私がかつて10年以上にわたって山岳部の顧問・コーチを務めていた仙台一高が所有する山小屋「井戸沢小屋」である。クラス合宿ができる規模で、今年は築後50年!澄川スノー・パークというスキー場から歩いて約3時間半、標高1450mの山中に建つ。かつては県内にいくつかあった県立高校所有の山小屋も、今はわずかに二つを残すだけになってしまった。貴重なそのうちの片方である。
 私は毎年この時期に、山岳部OB会の方々と、冬山の静寂を求め、小屋の管理も兼ねてこの小屋を訪ねるのだが、今年ほど興味津々だった年はない。暖冬による記録的少雪である。近くの樹氷原も、果たして樹氷ができているのやら・・・?
 ところが、行ってみると意外に雪は多かった。例年より50㎝くらい少ないかな、とは思うが、それは少雪だという意識があり、色眼鏡で見るからであって、そんな意識がなければ気付かない程度の差だ。樹氷も、外見上はほとんど変わらない。近づいて、ストックで突いてみると、樹氷と言うよりは樹雪といった感じで、やはりいつもの年とは少し違うぞと、かろうじて意識できるに過ぎない。
 どうやら、直前の寒波で一気に積もったらしく、ふわふわのパウダースノーである。スノー・シューを履いていても、ずぶずぶと沈み、股下くらいのラッセルを強いられるところも少なくない。加えて低温。計っていなかったが、-10℃を下回っていたことは確実だ。ストーブに薪をくべてもくべても、なかなか暖かくならない。昨日は猛吹雪でスキー場は閉鎖。思いがけず、例年以上に冬らしい山の雰囲気を満喫することになった。
 とは言え、これで今年の暖冬が「なし」になったわけではない。先週木曜日には、南極で+18.3℃という観測史上最高の気温が観測されたと言うし、宮城でも今週後半は10℃を超える日が続くらしい。これらが、温暖化の影響かどうかは直ちに言えないが、地球の変調は不気味である。自然は人間よりも圧倒的に大きく強い、ということを忘れてはいけない。

 

(裏面:1月29日付け朝日新聞「時時刻刻」欄「森林火災 温暖化の波」を貼付
平居コメント:最近の日本では、雨による災害が温暖化の影響として語られることが多い。一方、世界に目を転じると、森林火災の急増が深刻だ。山火事が起こる→地面が露出する→地中の二酸化炭素が放出される、というプロセスで温暖化は加速する。この記事で一番深刻なのは、最後の部分だ。「転換点」を「プラネタリー・バウンダリー」とも言う。キーワードとして一度検索してみることを勧める。)