肺炎禍ののどかな週末

 先週末は、家族で鳴子温泉に行っていた。なにしろ、子どもたちは学校がなく、少年野球も休止である。家の中がのんびり落ち着いていていいなぁ、とも思うが、彼らなりにストレスもあるようだ。加えて、旅行キャンセルや自粛という動きの中で、宿泊施設は厳しい経営を強いられているらしい。ここはひとつ、閑古鳥が鳴いている宿泊施設にお金を落としに行こう、ということになった。
 鳴子温泉は我が家のお気に入りである。なにしろ、鳴子温泉郷全体(鳴子、東鳴子、中山平、川渡、鬼首)で源泉の数は400!全国に11種類あるという泉質のうち9種類が鳴子だけで楽しめる。鳴子のひなびた町並みもよい。
 3~4日前に某ホテルを予約した。特別安くなっているということもないが、予約は簡単に取れた。本当は鉄道で行きたいところだったが、家族で鳴子温泉を往復すると1万円にもなる。車だと2000円だ。環境・資源には代えられないとは言っても、この差はあまりにも大きい。同じ金額を使うなら、鉄道で行ったつもりで、1人当たり2000円高級な宿に泊まった方がいい、という気になってしまう(実際にはそんなこともしないのだけれど・・・)。
 着いたホテルは、混んでいるということもないが、思っていたほど閑散としていなかった。肺炎騒ぎで旅行自粛の風潮が強い中、わざわざお出掛けいただいたから、と言って、ビール2缶とウーロン茶2瓶を付けてくれた。予約時には、朝夕食共にバイキングということだったが、行ってみれば、肺炎の感染を防ぐためということで、バイキングはなし。お膳とオーダーバイキングの組み合わせ、というのになっていた。
 オーダーバイキングとは、一応バイキングなのだが、係の人が立っていて、言えば取ってくれる、というものである。基本セットがお膳として出されているので、選べる料理は少ない。しかも、調味料も含めて量の調節もできないので、いかにも「痒いところに手が届かない」気分だった。不自由は不便である。

 話は少し戻る。
 夕食まで2時間半あったので、1人で散歩に出かけた。温泉街から、上野々スキー場、潟沼をぐるりと回れば、1時間あまりのコースだろうと思って宿を出た。上野々スキー場(雪は当然ゼロ)を過ぎて間もなく、「鳴子シャンツェ→」という看板を見つけた。へぇ、こんなところにジャンプ台があるんだ!?と驚き、ちょっと見に行ってみることにした。
 ゴルフ場の中の道を少し行くと、右手に「ははぁ、これがジャンプ台の跡だな?」と思えるような場所があったが、既に台はない。帰宅後にネットで調べてみると、少なくとも1980年代くらいまでは各種大会で使われていたようだが、その歴史については分からない。K点が85mだったという話も見つけられたが、とてもそんなに大きな台があったようには見えなかった。
 せっかくなので、引き返さず、その道をもうしばらく奥に行ってみることにした。太陽の場所を手がかりに、あまり西に進むようだと温泉に戻れなくなるので止めよう、と思った。しかし、道はやがて東へと曲がり始める。これなら最終的には温泉に戻れるのではないか?と思い始めた。
 更に15分ほど歩いたところで、思ったより遠いぞ、と思い始めた。しかし、この時には、既にある程度の距離を歩いてしまっていたため、引き返すのもおっくうになっていた。足を速める。
 一生懸命1時間あまり歩いたところで、ようやく人家が見えてきた。やがて国道に出るという確信が得られ、少しホッとした。しかし、ここからも遠かった。全速力で1時間20分歩き、ようやく大きな道に出た。川渡温泉東鳴子温泉の中間であることが分かった。
 これはとんでもないところまで来てしまった、と思った。宿までは、更に小1時間かかるかも知れない。日没との勝負である。東鳴子温泉の旧道を通り、鳴子御殿湯の駅に着いた。念のためと思い、駅に寄り道すると、運良く8分後に鳴子温泉行きの列車がある。
 鉄道で鳴子温泉に戻り、日没にも夕食にも間に合った。食前の散歩としてはあまりにもハードな2時間だった。帰宅時、私がどれくらいの距離を歩いたのか計るために、車で同じ道を走ってみた。宿から鳴子御殿湯駅までちょうど10㎞だった。疲れたわけだ。
 週末に家族全員が時間を取れるというのは、正に肺炎様々である。このまま、休校というより休部活が続いたら、またどこかに行ってみようか・・・。