みんなでまもった美術館

 日曜日の午後、レターパックが届いた。中から出てきたのは『みんなでまもった宮城県美術館 宮城県美術館の現地存続運動全記録』という本。カラー、A4版250ページという立派なものである。発行・編著は「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク」。非売品だが、買えば2000円以上はしそうだ。
 宮城県美術館については、一昨年11月、突如宮城野区楽天生命パークの近く)に移転させ、コンサートホールとセットの複合施設にする、という案が県から示された。それについては多くの批判が湧き起こり、一つの市民運動となった。この私も河北新報に一文を寄せたことがある(→こちら)。結局、1年後の昨年11月、市民の反対運動が実を結び、県は移転案を撤回せざるを得なくなった。
 今年の3月だったか、市民運動の事務局から連絡があり、活動の経緯をまとめている、河北新報掲載の投書をそこに載せさせて欲しい、とのことだった。もちろん、私は快諾したのだが、何しろ新聞社は私の文章にあれこれと手を加えた。「さすがは新聞記者」などとは全然思わない、実に不愉快な手直しである。そこで、今回、新聞社に送った原型での掲載をお願いしたところ、それでよいということになった。他にもそのような人が何人もいると言うから、新聞社の手直しは甚だ不評なのである(何なんだろ、これ・・・)。
 そんなやりとりがあってから数ヶ月。私はすっかり忘れていた。そうしたところが、今回の冊子である。この冊子を出すため、多少なりともカンパを、みたいな話が一切なかったのは驚きである。財源が何かは知らない。
 とても充実した内容の本である。運動が終わった後にも、こうして記録の整理に膨大な手間が費やせたというのは、最後に自分たちの望むとおりの結果になったことが何と言っても重要だろう。最後に意気消沈では、徒労感ばかり大きく、こんなエネルギーは湧いて来ない。更に、活動そのものが楽しかったのだろうと思う。似たようなことを考えている多くの人が集まり、交流することによって得られる人間的な充実感、それが本の全体から感じられる。
 これが、他の政治的な問題に対しても通用する方法論や勢いになればいいのに、そう思った。本当は先月宮城県議会で可決した水道事業の民間委託問題なんかは、同様の努力をして阻止すべき最高の案件だったのだが・・・。

 

*明日から10日ほど休筆します。