身の毛のよだつ話

 北海道で消化したスケジュールは次のとおりであった。(==は交通機関、--は友人の車、・・・は徒歩)

7月22日仙台港19:40=(太平洋フェリー
7月23日:=11:00苫小牧港・・・苫小牧駅13:26=(室蘭本線・普通)=14:03追分15:09=(おおぞら7号)=18:39釧路(ホテル泊)
7月24日:釧路6:03=(釧網本線・普通)=9:17網走--天都山--網走刑務所--能取岬--サロマ湖(ワッカ原生花園と幌岩山展望台)--17:20斜里(友人の友人宅泊)
7月25日:--清岳荘(登山口)5:00・・・(旧道)・・・斜里岳山頂・・・(新道)・・・11:25清岳荘--緑温泉--小清水原生花園--16:00網走駅(ホテル泊)
7月26日:網走駅9:15・・・10:15博物館網走監獄11:33=(バス)=11:45頃網走バスターミナル・・・市街地・・・12:20網走駅13:00--陸別--足寄--糠平温泉--三国峠--18:00糠平温泉(東大雪自然館の軒下泊)
7月27日:--幌加温泉登山口4:25・・・9:15ニペソツ山頂9:25・・・13:40幌加温泉登山口--14:30糠平温泉(ホテル泊)
7月28日:8:45--然別湖--新得--狩勝峠--富良野--望岳台--旭川--丸瀬布(保存森林鉄道)--遠軽--サロマ湖--18:10網走(YH泊)
7月29日:9:00--ウトロ--岩尾別温泉--知床五湖--知床峠--羅臼--知床峠--斜里--17:00網走(ホテル泊)
7月30日:網走8:44=(石北本線・普通)=9:48北見10:29=(快速きたみ)=13:50旭川14:00=(ライラック26号)=14:59岩見沢15:06=(室蘭本線・普通)=16:34苫小牧・・・17:20苫小牧港19:00=(太平洋フェリー
7月31日:=10:00仙台港

 期間全体を通して、無茶苦茶に暑かった。北緯44度、オホーツク海に面した網走でも、気温は連日30℃を超え、湿度も高く、夜もさほど気温が下がらない。更に、宮城県と違うのは、建物に入っても列車に乗っても暑いということである。
 最近の宮城では、少々暑くても建物や鉄道ではエアコンが効いているのでほっと一息つける。私は、文明こそが温暖化の元凶、エアコンに頼って生活するなどまかりならんという立場の人間で、自宅にもエアコンなど設置していない。それでも、いつの間にか、我が家以外にはそれがあるのが当たり前という感覚になってしまい、しかもそれに助けられながら生活していたことに気付かされた。
 ビジネスホテルとは言え、さすがに中央資本の近代的なホテルは空調完備なのだが、友人の友人宅やYH(ユースホステル)にはエアコンがなかった。どちらも建物の構造上、風通しが悪く、寝苦しかった。
 私が車で旭川を通った28日、旭川では最高気温が36.7℃だった。29日のテレビで、旭川では35℃を超えた猛暑日が、観測を始めてから昨年までに合計7日しかないのに、今年は既に5日もあった、と言っていた。調べてみれば、その後も、30日、31日と立て続けに35℃を超え、今年(=7月)だけで、過去数十年間の合計と同じ7日間の猛暑日を記録したようだ。雨も降らず、地面はからからに乾いていて、農昨物の今後が心配される事態になっていた。
 本当は、29日は知床で、定置網漁に同行させてもらうことになっていたのだが、網を揚げても魚が入っていないといって、この日は漁に出ないことになってしまった。船に乗せてくれる予定だった漁師・Aさんの家に立ち寄ったところ、知床半島の北側に暖水がたまっていて、本当に魚が獲れないのだそうだ。しかも、網を揚げると真鯛やマンタが入っていると言って、Aさん自身が驚いていた。どちらも南の海の魚である。わずか10分ほどの立ち話で、同じことを3回くらい言っていたから、本当に衝撃的な海洋環境の変化なのだろう。私が海の美しさをほめると、「だから悪いんだ」と言葉を遮る。海がきれいだ(=透明感がある)ということはプランクトンがいないということで、それは海の貧しさそのものだということだ。
 一夏の猛暑をもって、直ちに「温暖化だ」ということはできない。だが、知床で聞いた海の話まで含めて考えると、明らかに今年だけの例外的な現象ではない。身の毛のよだつような深刻な話である。Aさんは、「この流れは止められない」と言っていたが、「止められない」よりも、「止めようとしていない」ことが問題だ。あと数年、十数年、上手くいって数十年後に、人類の生存がいよいよ危機に直面した時、その時の若者に、「○年前、既にこうなることが分かっていたはずなのに、なぜあなたたちはそれを止められなかったのか?」と問い詰められた時、大人は何と答えるのだろう?