遠からずとも当たらず

 先週の土日、私は「コロナに関する文科省通知の問題」と題して、11日付け河北新報の記事の基づき、9月10日付けの文科省通知を厳しく批判した。ところが、その後、文科省のホームページで、通知は読むことが出来るのだったと思い出し、記事の元になった通知というものを読んでみたのである。
 いかにもお役所の文書。非常に分かりにくい。そもそも、この文書は中学校だけでなく、小学校から私立も含めた高校まで、更には専修学校高等課程まで対象になっている上、生徒を受験させる中学校側も、受験生を受け入れる高等学校側も、場合分けをせずに書いてある。それが分かりにくさの要因だ。県教育委員会事務局(教育庁)に勤務しているような優秀な人には難なく読めるのだろう、とも思うし、分かりにくいことによって忖度の心理を引き出し、文字面以上の作用を及ぼそうとしているのだろう、とも思う。
 さて、苦労しながら読んだ結果思ったのは、私がこっぴどくやっつけたほどひどい文書でもない、ということである。長い通知の中身を無理矢理端折って引用する。

「高等学校入学者選抜等の調査書において出席等に係る日数(「出席日数」「出席停止・忌引き等の日数」「出席しなければならない日数」など)の記入欄を設けている場合には、臨時休業や分散登校、出席停止に伴う当該欄への記載内容により、特定の入学志願者が不利益を被ることのないようにすること。(中略)なお、公立学校入学者選抜の調査書の記載事項については「高等学校入学者選抜について」(平成5年2月22日付け文初高第243号文部事務次官通知)において、「高等学校入学者選抜の資料として、真に必要な事項に精選すること。」としているところであり、今後の調査書の検討に当たっては、入学選抜の実施に真に必要な事項に見直しを図ること。」

 こういうのを「奥歯に物が挟まったようだ」と言う。確かに、通知のタイトルは「現下の新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえた令和4年度以降の高等学校入学者選抜等における配慮等について」となっていて(長い!!)、「新型コロナウイルス」という文言が見られるものの、上に引用した具体的な配慮内容の所にはそれが見られない。「真に必要な事項」とは何か?新型コロナ等の病歴がそれに当たるというのなら、はっきりそう書けばいいのに、或いは、内申書の様式を文科省が決めればいいのに・・・と思う。
 私は、基本的に「上意下達」が嫌いなのであるが、全国統一様式という文書は山のようにあるのであり、調査書を全国共通様式にしてまずいということもないような気がする。
 それから、私は先日、中学校が内申書に書かないというやり方は邪道で、むしろ高校に対して、必要なら(あくまでも、必要なら、である)、それを合否判定の材料に使うなという通知を出すべきだ、と書いた。
 おそらく、上の引用部分の前半は高等学校宛て、(中略)以下の後半が、中学校宛ての内容と思われる。だとすれば、前半には、私が指摘したような高校宛ての注意が書かれている。新聞記事で欠落したのである。
 今、改めて問題の河北新報記事を読んでみると、「コロナ欠席『不明記を』」という見出しはなかなか大胆な表現で驚く。分かりにくい通知が言おうとしていることを、市民にも分かるように語ったということでは評価できる。一方、高校側への通知について触れていないのは、やはり片手落ちのように思う。この記事だけ見ていれば、やはり先日の私の作文が不当なものには思われない。しかし、通知原文を見てみると、半分は文科省に対して失礼なことをしたな、とも思う。「当たらずとも遠からず」と言うよりは、「遠からずとも当たらず」といった感じだ。
 結局のところ、情報を手に入れるというのは難しいことなのだ。新聞は信頼度の高いメディアとされているのだが、それでも、このような問題のある記事が出る。注意をせねばとは思うものの、実際にいちいち出所を確かめることが出来るかといえば、それは無理というものである。だけどやっぱり、文科省にはもっと分かりやすい発信をしてもらいたいものである。