不合格になったおかげで・・・

(10月7日付け「学年主任だより№20」より②)


【「不合格」になったおかげ・・・】

 就職の第一次応募分の結果が全て出た。何しろ就職希望者が例年の半分なので、「少数精鋭で全員合格!」と思っていたが、現実はなかなか厳しかった。私たちの目から見て「優れている」と思える生徒もけっこう落ちた。そこには「社会」の厳しさが表れている。そのこともまた勉強。(進学の諸君も知っていた方がいいよ。)
 以前、不合格は「縁がなかった」のだと書いた。その通り。また別な会社に就職した後、まじめに仕事をすると、その会社や仕事に対する愛着が湧いてきて、「ああ、あの時不合格になったおかげでこんな会社と巡り会えてよかった!」と思えるようになる。人生はそうして思いもかけない展開をしていく。だから面白い。


【ありがたい、ありがたい・・・「内定」の重さ】

 授業に行っているクラスの一部でお話したことなのだが、全クラスに向けて少し書いておこうと思う。会社が人を雇うのがいかに大変か=採用してもらうということがいかにありがたいか、という話である。
 会社は、採用すればその瞬間から給料を支払う必要がある。入社直後は全く役に立たないにもかかわらず、将来の可能性に向けて給料を払いながら、仕事だけでなく、社会人としての常識に至るまで指導してくれる。しかも、実は、会社が支払うのは給料だけではないのだ。
 この世には社会保険というものがある。病気、老化、失業などやむを得ない事情によって生活できなくなることがないよう、加入が実質的に義務づけられている保険だ。保険料は税金みたいなものである。そしてそれには、本人が負担する掛け金の他に、会社負担分というのが設定されている。
 具体的に見てみよう。給与が20万円の場合を想定する。

・健康保険 19800円(本人:9900円  会社:9900円)
・年金保険 36600円(本人:18300円 会社:18300円)
雇用保険  1800円(本人:600円 会社:1200円)
失業保険ともいう。会社が倒産したり解雇された時に、次の仕事を見付けるまでのつなぎとして支給される(だいたい3~6ヶ月)。
労災保険  1000円くらい。(全額会社負担)
仕事が原因で病気やケガをした時、医療費等が補償される。仕事の危険度によって保険料が違うので、掛け率(ネットで簡単に探せる)を見ると、自分の仕事の危険度が分かる。最低は金融や不動産業で、最高は鉱業(鉱山での労働。今の日本にはほとんどない)。
*これらの他、40歳になると「介護保険」(会社が半分負担)が加わり、「保険」ではないが、「子ども・子育て拠出金」(680円、全額会社負担)というものもある。
*以上はおおよその話である。保険料や保障の範囲など、給料や勤務実績によって違いがある。また、言葉の意味もデリケートだ。そもそも、実は「給料」という言葉の意味でさえ、定義するのはなかなかに難しい。これ以上のことは各自調べてみよ。

 と言うわけで、給料が20万円の人を1人雇うために、会社は毎月23万円が必要で、更に、「給料」とは見なされない「手当」も払わなければならない。仕事がある時もない時もだ。私は、自分の家族だけで細々と会社を経営していくことはできるかも知れないが、人を雇うことはできそうな気がしない。人を雇うというのは、その人の家族の生活に責任を持つということでもある。人を雇うのは大変なことだ。
 こんな事情が分かっていると、採用してもらえることのありがたさがより一層身にしみてくるはずだ。心を込めてお礼状を書かねば・・・。