日本シリーズの夢・希望

 プロ野球クライマックスシリーズ(CS)で、両リーグの優勝チームであるヤクルトとオリックスが共に勝って、日本シリーズ進出が決まった。たかが野球と思いつつ、私はほっとした。私はそれらのチームに何の思い入れもないのだが、リーグ優勝したチームが日本シリーズに出られず、リーグ3位のチームにも日本一のチャンスがあるなどという制度は到底許しがたい。しかも、CS前半なんてたった3試合だ。ピッチャーのその日の出来の善し悪しが試合を決定づける、まぐれ当たりがあり得るといった野球という種目の性質もあって、ちょっとした偶然でも下克上は起こり得る。本当に早く廃止して欲しいものである。
 オリンピックを見ていて、決勝戦で負けて銀メダルと、3位決定戦で勝って銅メダルはどちらが嬉しいのだろうか、とよく思った。私だったら、たとえ銀を逃した結果の銅であったとしても、最後が勝ちで終わった方が気分がいいような気がする。
 2013年に楽天が優勝した時、私は連日ハラハラしながら日本シリーズを見ていた。ここで負けたら、1年間の努力もリーグ優勝も全てが水の泡だ、と思った。もちろん、既にリーグ優勝は決まったことなのだから、それが「水の泡」というのは本当は変なのだが、意識としては確かに「水の泡」なのである。それくらい、最後を「勝ち」で終えるというのは気分的に大切なのだ。まして、リーグ優勝しながら、日本リーグにさえ進めなかった時の喪失感というのは、想像を絶するほど大きなものであるはずだ。
 それにしても、両リーグともよく似たCSになったものである。素晴らしい投手力、打てない打線、そしてヤクルト、オリックスともに強い勝負運。
 そもそも、これらのチームは、昨年度の最下位同士だ。よく「○○にいたんじゃ優勝なんて経験できない」とか、「優勝を争えるチームに移りたい」とかいう言葉を耳にする。そんな言葉はくそ食らえ。偶然のなせる技なのか、監督他、スタッフの実力なのか、それは知らない。ただ、このようなことが起こると、どんなチームについても可能性は否定してはいけないということ、逆に言えば、どんなチームでもドラマチックに成長を遂げ、優勝さえ出来る可能性があるということがはっきりと分かる。それは、一つ一つのプレー以上に夢や希望を感じさせてくれることだ。
 さあ、日本シリーズを楽しみにしよう。