人間の憂鬱

 卒業式が終わって、喪失感というのか、徒労感というのか(笑)・・・いずれにしても、3年間強いられた来た緊張から解放されて、なんだか体の調子が悪い。否、体だけではない。頭の調子も悪い。頑張って何かをしよう、という気に一切ならない。
 頭の調子が悪いのは、気が晴れないということにもよるのだろうが、その原因は明らかにウクライナである。様々な報道に接するたびに、ウクライナの人々の悲惨な生活と気持ちを想像しては滅入ってくる。人間は、自分自身が悪いことを一切していなくても、他人によって不幸に陥れられることがあるのだ。それが日本であっても、おそらくは同様だろう。日本が他国から侵略された場合、その侵略を受け入れるべきなのか、抵抗すべきなのか?抵抗すべきだとして、果たして自分に銃を持って戦う覚悟が生まれるだろうか、と思うと、「想像もつかない」と言うしかなく、憂鬱は倍加する。
 IPC(国際パラリンピック委員会)が、北京大会からロシアとベラルーシの排除を決めた。やむを得ない決定だと思う。オリンピックやパラリンピックに政治を持ち込んではならない。スポーツは時に融和のきっかけを作り得る。しかしそれは、双方が融和を求めていながらきっかけを見出せずにいる時の話である。片方が、「俺は俺のやりたいようにやる」と構えて弱い者いじめをしている時に、スポーツの世界では仲間だよね、という態度を取ることは、いじめを見て見ぬふりすることとさほど変わらない。
 プーチンの頭は壊れている。頭の壊れた人間は恐ろしい。世界がどのように非難しようが、説得しようが、頭の壊れた人間に論理は通用しない。正論を述べれば何かが動くと思うのは誤解である。核での威嚇は虚仮威しでは済まないかも知れない。
 プーチンの頭が壊れたのは大問題だが、もっと大問題は、それをロシア人が誰も止められないということである。現在のロシアの政治体制について私は疎いのだが、少なくともプーチンは選挙で選ばれているわけだし、議会もあるはずだ。それでいて、これほどの愚挙・暴挙を誰も止められない。少なくとも、一般市民による多少の抗議活動以外何も伝わってこないというのはどういうことか?

 今のところ、ロシアに関して「粛清」ということは聞こえて来ないが、本当にそれは行われていないだろうか?プーチンに楯突く人間、ウクライナ侵攻に異を唱える人間を1人か2人「粛清」してしまうと、プーチンに楯突くことは本当に難しくなるだろう。そのようなことが起こっていなければ、プーチンの横暴がこれほどの力を持つことが、私には考えにくいのだけれど・・・。
 アメリカの大統領がトランプでなくてよかった。これまた狂人に近いのであって、トランプが大統領だったらアメリカはどのように動いただろう?想像するだに不安だ。思えば、トランプは現在大統領の地位にないとは言え、前回の選挙で7000万以上の票を集めた。と言うことは、おそらく大統領選挙で勝ったプーチンには、ほとんど報道されないだけで、ウクライナに侵攻しても今後の政権運営に支障が生じないと信じる根拠になるだけの支持者がいるのだろう。人間の「業」だ。
 国連のロシア非難決議は、141ヶ国の賛成で可決した。前回、2014年にロシアがクリミア半島を併合した時の決議と比べると、賛成が4割増えて、反対が4割減ったというから、世界はそれなりに進歩しているという希望を持つことができる。かなり強い経済制裁も発動されているし、経済的損失を覚悟の上で、ロシアとの関係を断つ国や企業を増えているというのは頼もしい。
 果たして、それらによってロシアにウクライナを断念させられるだろうか?武力による現状変更、他国侵略を絶対に許してはいけない。それを許してしまったら、第2、第3のウクライナが誕生する。バルト三国しかり、台湾しかり。だが、ロシアがどうしても言うことを聞かなかった時、武力以外に解決の方法があるのか?これは非常に悩ましい。バイデンでさえ言うように、欧米が武力介入をすれば、ことは第3次世界大戦に発展する。人間は、科学技術によって、核を始めとする途方も無い殺傷兵器を数々生み出してしまった(今回初めて耳にした「真空爆弾」にもびっくり!)。人間が操作できる力はあまりにも非人間的なレベルである。二酸化炭素の排出=温暖化を、いまだかつてないペースで加速させることにもなる。それらによって、既によく言われている通り、第3次世界大戦は人類の滅亡に近い事態を招くだろう。
 自分にできることは何か?ぐるぐると、堂々めぐりのように考え続けるのだけれど、憂鬱な気分になるだけで具体的な方法は見えてこない。ひどい。起こっていることがあまりにもひどすぎる。