相も変わらず・・・物価高対策の愚

 いつもぶつぶつ言うとおり、政治家のやることを見ていて、「偉いなぁ」と感心することはまるでない。基本的に、何もかも間違いであると感じる。外交青書に、「北方四島が我が国固有の領土である」とわざわざ書き込んだのは間違い。こうしてざわざわ「今の」ロシアを刺激するなどというのは、その見返りとなるメリットがないだけに、まったくの「余計なこと」である。あるいは、それを書くなら、「日本は国際的なルールに則り、武力による解決ではなく、外交交渉による是正を目指します」とでも書いて、そちらを強調しておけばよかった。
 もっと愚かなのは、石油を始めとする物価高騰対策である。私は、今後石油の値段なぞ、多少の凸凹はあるかも知れないが、有限資源である以上、上がり続けるに決まっているのだから、仮に変化が急激すぎて社会的ダメージが大きすぎるにしても、こんな無節操な補助金の出し方はすべきでない、温暖化対策としてエネルギー消費を抑制するためにも、補助金は農水産業、公用車、公共交通機関に限定すべきだと言い続けている(→直近はこちらかな?)。
 日本人の大半が、何の節操もなく、自国では採れない石油を消費し続けている。それをゼロにすることが、最終的な「持続可能」であり、究極の安全保障である。少なくともそのことは意識していなければ。2013年度比で、2030年までに温室効果ガスを半分に、2050年までに実質ゼロに・・・その変化の急激さに比べたら、今程度の石油や電力の値上がりなど些細なものである。その値上がりに「対策、対策」と大騒ぎするのは、温室効果ガスの削減目標など初めから達成する気がないということだな。 
 昨日の朝日新聞社説は、よく書けていた。今私が書いたような、ガソリン価格上昇による石油消費抑制効果を必要だと確認した上で、「今年度上半期に限った措置」との政府案が、与党の反対で曖昧にされたことを批判し、「ガソリン以外の必需品を含めた価格高騰の負担を、所得に応じてきめ細かく緩和する方策の検討こそ急ぐべきだ」とする。
 また、原油高対策に当てる2.7兆円を、国会での審議が必要ない予備費から支出することについても厳しく批判している。国会が開会中で審議可能な状態にある上に、そもそも、予備費はコロナ対策として枠を増やした経緯があるからだ。まったく当然の、理にかなった指摘である。
 先日、まずJR西日本が、不採算17路線30区間の収支を発表した。今、うっかり手元に新聞記事を残していないので、話がけっこう曖昧なのであるが、JR東日本もその動きに追随するらしいし、今後経営を続けていくためには、かなり大きな値上げの必要があるらしい。補助を出すなら、このようなところにこそ出すべきだ。
 国鉄が民営化されたことによる必然なのだろうが、公共交通機関の整備というのは、単なるもうかるもうからないという問題ではなく、社会制度の設計そのものである。今だって、鉄道よりも車の方が極端に安いことが、鉄道の利用にブレーキを掛けていることは間違いない(→実例記事1実例記事2)。
 朝日新聞は、岸田内閣の物価高対策が参院選対策であろうと疑っている。そうかも知れない。だとしたらなおさら由々しきことである。だが、そういう目先の対策に釣られて自民党に票を入れようというのであれば、それが選挙民のレベルなのだからどうしようもない。
 今は野党がとても不甲斐ないので、あまり策を弄さなくても自民党は勝てると思う。こういう時こそ、政治家としてのプライドに掛けて、長期的なビジョンと理念とを国民に示し、少しでも社会を「持続可能」なものに近づけていくための説得の努力をすべきではないのか?