最終的に生き残れる国

 ロシアに戦争を止めさせようと、いろいろな国際会議が開かれ、偉い人達が相談している。もちろん、直接、ロシアを武力攻撃するわけにはいかないので、経済制裁という間接的手段を用いることになる。その中心にあるのは、ロシアの政府や企業、重要人物の海外資産凍結であり、ロシアとの貿易停止である。これはこれで仕方がないのかな?と、少し思う。「少し」である。理由は二つある。
 一つは、それがどれほどの打撃をロシアに与えるのかよく分からず、それで本当にロシアが戦争停止をせざるを得なくなったりするのかなぁ、と疑っているからだ。
 もう一つは、確かに、一刻も早く戦争を止めさせるための一時的な措置とは言え、貿易を停止すると、最終的にロシアは得をするような気がするからだ。この点はもう少し説明が必要だろう。
 ロシアと日本に関する幾つかのデータを確認しておこう(『データブック オブ・ザ・ワールド2022年版』による)。

 面積 1709.8万㎢(日本の45.2倍)
 人口 1億4593.4万人(同1.17倍)
 人口密度 9人/㎢(同0.027倍)
    農地 1億2344万㏊(同27.9倍)
 森林 8億1531万㏊(同32.7倍)
 原油埋蔵量 148億トン(世界の6.2% 日本の∞)
 天然ガス埋蔵量 37兆3900億㎥(同19.9% 同 ∞)
 石炭埋蔵量 717億トン(同15.1% 同 ∞)

 貿易関係、特に石油や天然ガスのロシアからの輸入を停止すれば、この極めて豊富な資源が相当程度温存される。「最終的にロシアは得をする」と言うのは、その点に関してである。今後、目先の利益ばかりを追いかける人間の愚かさに加え、バカな戦争のせいもあって、温暖化は予想を超えて急速に進むだろうが、元々寒冷地であるロシアは、温暖化しても影響が少ない。いや、むしろ温帯化して食糧生産力も上がるかも知れない。暖房用の化石燃料の消費が今よりも減り、採掘可能な年数はさらに延びる。土地が極めてふんだんにある上、中国と違って、どうにも使いようのない高山や砂漠も非常に少ない。その面積に比べて、食わせることに汲々とするほどの人口もない。どう考えても、ロシアは最後の最後まで生き残れる国である。
 一方、日本は、エネルギーの大半を輸入に頼り、食糧自給率も低く、それを増やそうにも人口が多く、土地は狭い。朝鮮戦争のおかげも被りながら戦後復興に成功し、多少のお金を持ったことによって偉そうに振る舞ってはいるが、足腰の全くしっかりしていない、極めて表面的な立場の強さに過ぎない。虚勢を張って生きている、と言えばいいだろうか。しかも、巨額の赤字を抱えている。
 日本は身の程を知るべきだ。ロシアにもの申すことを止め、こびへつらって生き残る道を探せ、と言うのではない。国土が狭い上に地下資源に恵まれなかったという地理上の不利益を、金に物言わせて力尽くで解決し、贅沢三昧の生活をしながら偉そうにするのではなく、身の程を自覚した上で、自給自足で生き残れるつましい社会を目指すしかない、と言うのである。
 どうせ最終的に生き残れる国なのだから、ロシアもプラスアルファを求めて余計な戦争なんかしなければいいのに・・・。ぷんぷん。