バイオマス発電所に当たり前の壁

 毎日新聞では、「気候革命」という連載をしている(おそらく不定期)。一昨日は、バイオマス発電を特集していた。第1面4分の1と、第3面半分という巨大な記事である。見出しは、「バイオマス発電 岐路」(第1面)、「輸入頼み 燃料争奪戦」(第3面)だ。中見出し、小見出しを何面かに関係なく列記すると、「燃料高騰で採算悪化 撤退相次ぐ」「大型バイオマス発電に逆風」「加工や輸送 大量のCO₂排出」「中小は地産地消 熱も利用」だ。最後のひとつは少し傾向が違うが、他のを読めば、記事の方向性、内容はだいたい分かるだろう。
 我が石巻でも、定格出力75mwという大規模なバイオマス発電所の建設が進んでいるはずである。来年の5月に発電を開始するはずだ。「はずだ」を連発したのは、最近、建設の進捗状況に関する話をあまり聞かないからである。(→参考記事=説明会の時の話
 記事によれば、燃料価格の高騰のみならず、安定した入手が難しいなどの理由で、計画を撤回する例が増えているのだという。読みながら、私は「アホくさいのぉ」とため息をつく。あまりにも容易に、最初から予測できていた結末である(上のリンク記事に詳細)。記事には、ロシアによるウクライナ侵攻の影響なども書いているが、そんなものがあってもなくても、行き詰まることは明白であった。ロシアを言い逃れの材料にすべきではない。いくら相手がロシアでも失礼だ。そのことが分からなかったというのは、目の前の利益に目がくらみ、長い時間スケールや自然の理法というものを見失ったということだろう。ロシアがウクライナを攻める発想と大同小異、根は同じである。
 計画段階で白紙に戻ったのなら罪は軽い。一方、建設が進んだり、既に完成してしまっていたりしたら・・・建設に膨大なエネルギーを費やした分が、丸々環境破壊ということになる。
 記事では、小規模なバイオマス発電所の成功例が紹介されている。今、「成功例」とは書いたものの、CO₂の排出量は3割減らせるに過ぎない。しかも、FITという制度によって、間伐材利用の2000kw未満の発電所については、20年間、1kwh当たり40円という極めて高価な買い取り価格が設定されていて、それがあるから利益が出るのだ、という。これではアカン。
 ただ、この「小規模」というのは、ひとつの重要な鍵になる発想である。私は、バイオマス発電よりも、小規模水力発電が現実的だと思っているが、とにかく、大規模なものは、それを作るためにも大きなエネルギーを消費するし、何かにつけて柔軟な対応ができない。そもそも、自分が使うエネルギーをまかなえればいいというつましい発想ではなく、大量生産(発電)で大もうけを狙うという匂いがぷんぷんする。環境と経済は矛盾するという現実を受け入れることも大切で、そのことと「大規模」は矛盾するのだ。
 石巻バイオマス発電所は、強行突破をして、無理を承知で操業を始めるのであろうか?我が家からは日本製紙が作った石炭火力発電所もよく見える。