いざ箟岳山

 Run友のUさんが、県内で行われる某マラソン大会に出ると言う。ならば、夕刻、打ち上げでもしますか、ということになった。私はレースに出ない。参加費を払うのがバカバカしいからである。5000円前後の参加費なんか払わなくても、世の中には走っていて楽しい場所がたくさんある。
 しかし、一緒にビールを飲むとなれば、体を動かしておいた方が美味いに決まっている。地図と天気予報を見ながら、箟岳山(ののだけさん 236m)に行くことにした。

石巻駅6:51-(JR)-7:11前谷地駅・・・産仮小屋・・・8:40箟岳山(箟峯寺)8:55・・・石仏公園・・・9:25涌谷高校・・・9:50黄金山神社・・・10:25涌谷城10:30・・・佐々木家住宅・・・見龍寺(涌谷伊達家霊廟)・・・11:20涌谷駅11:44-(JR)-12:12石巻

 天気は上々。県道29号線と61号線が交わる交差点のあたりで、ほんの少しだけ時雨が来たけれど、後は気持ちのよい秋晴れだった。例によって歩いたり走ったり。Yahoo地図で測ってみると、なんと24.3㎞、時速を4㎞とした参考タイムは6時間4分である。そこを約4時間というのは、時速約6㎞だから速い。思えば休憩はあまり取っていない。今日の目的地であった篦峯寺以外では、水を飲むのに多少立ち止まった程度。
 前回、女川に行った時(→その時の記事)と違って、柿の実もすっかり色付き、いかにも日本の里の秋といった風情は魅力的だ。朝が少し冷え込んだからか、あちらこちらで靄がかかっている。
 箟岳山には、小学校6年生の終わり頃に行ったことがあった。しかし、何も憶えていない。約45年ぶりで訪ねてみて、頂上にある篦峯寺(こんぽうじ)というお寺があまりにも立派なので驚いてしまった。本堂(観音堂)は、江戸時代末期の建設。江戸時代のものとしては宮城県最大という約15m四方の木造建築だ。軒下の組み物(木組み)もしっかりとした三手先で、梁の彫刻もなかなかの力作だ。
 昔は24もの堂が境内に建っていたらしい。今はほとんど残っていないが、広々とした境内が、その繁栄を感じさせる。事前の予習で、箟岳山は頂上からの眺望が素晴らしい、牡鹿半島金華山まで見える、という情報をgetし、楽しみにしていたのだが、樹木が茂っていて、北の方の一部を除いて眺望はない。境内北端にある展望台だって、さほど広い視野が確保できるわけではない。ただ、私が行った時は、下界に霧が立ちこめ、まるで雲海を見るようで美しかった。
 観音堂を別にすると、私が感銘を受けたのは、境内に立ち並ぶ杉の古木だ。幾つかの杉に名前が付けられ、説明のための掲示板が立てられているのだが、それによれば全て推定樹齢900年の古木だ。塩釜神社の「ご神木杉」が推定樹齢800年だから、それを上回っていることになる。平安時代の後期に芽を出し、歴史を見つめてきた杉だ。一部は枯れてしまったようではあったが、これだけ多くの、樹齢500年を超えるような杉が生えている場所というのは貴重である。なにしろ、観音堂が建てられてから200年にもなっていないのである。それを思うと、900年というのは途方もない長さの時間だ。
 少し体重が増えてきたため、減量しようと歩き始めたのが9月の半ば。1ヶ月ちょっと前である。おっくうに思っていたが、始めてみると歩くのは楽しい。歩くことが手段ではなく目的になると、多少距離が長く、時間がかかっても、「(車や自転車ならもっと早く行けるのに)こんなにかかる」ではなく「こんなに歩ける(からかえって楽しい)」になる。なんだか病みつきになりそうだ。
 Uさんと市内の中華料理屋で酒を飲みながら、来月上旬に石巻市井内から安野平を越えて女川まで行く約束をした。当然、三秀でビールを飲むことは織り込み済みだ。秋晴れになるといい。