COP27閉会・・・戦争と環境

 COP27が閉会した。発展途上国が気候変動によって受けた損害を補償するための基金創設が合意された「歴史的」な会となった、という報道も目にしたが、こと温暖化にブレーキをかけるということに関しては、ほとんど何の進展もなかったように見える。基金にしても、誰が拠出するかについての規定がなく、「先進国」とさえされていないというから、実際に機能するかどうかなんて分からない。温暖化の影響による損害かどうかを認定するにも、いろいろと悶着が起きることだろう。
 私は、ずいぶん前から、温暖化の進行に最も大きな影響を与えるのは軍であり、戦争だと言っている(→参考記事)。自明のことのように思える。ロシアのウクライナへの軍事侵攻にしても、温暖化との関係で大きな問題があるということを、なんと、開戦の4日前に書いている(→こちら)。ところが、意外にそんな指摘を聴く機会は少ない。
 そうしたところ、COP27の閉会に合わせて、今日の毎日新聞には「軍事排出ゼロ 夢物語」「温室効果ガスの5% 報告義務なし」という見出しで、軍・戦争と温暖化についての比較的大きな記事が出た(八田浩輔筆)。読んで、なるほどと思ったり、やっぱり大変だと青くなったりした。
 記事によれば、世界の軍事・防衛部門からの温室効果ガスの排出量は分からないのだそうだ。京都議定書が作られた時、アメリカが軍事排出を計算外にするよう要求したことによるらしい。それはパリ協定でも受け継がれた。軍事排出を公開してしまうと、軍事機密が守られなくなるからなのだろう。記事はそのことを「大きな『抜け穴』」と書く。
 この数年、限られたデータからの推測ではあるが、それがおぼろげに把握できるようになってきたらしい。それによれば、軍事排出は世界の排出量の1~5%になる。アメリカ軍の活動だけでも、スイスやニュージーランドといった国の排出量を上回り、アメリカの軍用機からの排出量だけで乗用車600万台分、だそうだ。私のエネルギーケチケチ生活なんて、軍用機が10分くらい飛べば吹っ飛んでしまうほど些細なものなのだろう。
 ウクライナ環境省は、ヨーロッパの専門家の協力を得ながら、ロシアの軍事侵攻がもたらした7ヶ月間分の温室効果ガスの排出量を試算した。実際の戦闘行為から発生したものの他、破壊された施設の再建といった間接的な排出も含めると、CO₂換算で8300万トン。スウェーデンの年間排出量の2倍以上だという。
 スイスにしてもニュージーランドにしてもスウェーデンにしても、エネルギー消費量の多い先進国である。特にニュージーランドスウェーデンは、1人あたりのエネルギー消費量において、私が浪費大国だと思っている日本をさえ大きく上回る。そのことを考えると、アメリカ軍にしても、ロシア・ウクライナ戦争にしても、いや、彼らのみならず、あらゆる軍・戦争の地球に対する犯罪性は大きい。それで本当に軍事排出が全排出量の1~5%で済んでいるなら、むしろ不思議なくらいだ。
 具体的な数値はともかく、軍・戦争の環境へのダメージの大きさは、だいたい私が予想したとおりである。これが軍であり、戦争なのだ。命を守るためには、燃費なんて考えていられない。燃費を考えることがあるとすれば、それは環境との関係でではなく、補給との関係で戦略的にマイナスになる場合だけである。
 絶対に戦争などしている場合ではないのだ。だが、記事が見出しに大きく「夢物語」と書くとおり、戦争を終わらせることも、軍を縮小、解体させることも、現実にはまったく考えられず、むしろ日本がそうであるように、世界は真逆の方向へ向けて動いているようだ。
 全ては、温暖化を我が事として考えず、呑気に文明の利器をフル活用して生活している全ての人間の責任だ。軍事排出をなくすことが「夢物語」であることと、人間が今の危機的状況に気付き、血相を変えて対策に取り組むことが「夢物語」であることはパラレルだ。人間の業である。