時刻表の失敗

 北陸新幹線の金沢・敦賀間が開通した。楽しいことなんか何もない。新幹線が伸びれば伸びるほど鉄道は単純化されて(新幹線+在来線の普通列車のパターンだけ)つまらなくなり、在来線が三セクになって不便になる。
 それでも、それは社会の変化だ。社会の変化は記録しておきたい。あ、そう言えば、今月の時刻表を買っていなかった。毎年、3月には時刻改正があるので、必ず買っていたのに・・・。あと数日で4月号が発売されるこの時期、もう売っていないだろうなぁ、と思いながら最寄りの書店に行くと、まだ売っていた。JTBのもJRのもある。
 私は、JR監修の時刻表が世に出る以前、ということは、JTB(当時は日本交通公社)の時刻表しかなかった時代からのマニアである。鉄道についてはマニアとは言えない私も、時刻表についてはマニアと言える。なにしろ、私の目がほとんど弱視と言ってよいほどに悪いのは、地図と時刻表のせいなのである。小学校中学年以降の私は、常に地図か時刻表を手にして生活していた。我が家には、1974年7月号以降、飛び飛びにではあるが数十冊の時刻表が保管されている(重いし、自立しないので、取っておくのがとても大変)。
 そんな私にとって、時刻表と言えばJTBのものと決まっている。迷わず私はJTBの時刻表を買った。JTBでもJRでも、内容には、配列を含めてほとんど違いがない。しかし、それは「ほとんど」であって「全然」ではない。そのわずかな違いが、妙に違和感として大きく、JRの時刻表を手に取るのは、駅備え付けの時刻表を利用する時くらいだ。
 私が家の最寄り書店は、古書店併設である。探していた新書が安く売りに出ていたので、私は中古の新書3冊と新品の時刻表を持ってレジに行った。私の大雑把な計算では、絶対に2000円を超えるはずはなかったのだが、2300円あまりの金額を請求された。少し驚きつつ、「だったら買わない」というほどでもないので、そのままお金を払って買ってきた。
 自宅に着いてからレシートを見ると、時刻表が1705円と印字されている。え?!私は何かの間違いではないかと思って時刻表を見てみた。確かに、「1705円(税込み)」と書かれている。今日、新しい時刻表を買ってくるまで、私の机の上にあったのは昨年3月のものである。見てみると「1205円(税込み)」と書かれている。う~~ん、何でもかんでも値上がりのご時世とは言え、時刻表が一気に500円も値上がりしていたとは気付かなかった。
 いったいいつ値上がりしたのだろう?私は、Amazonで時刻表を調べてみた。「時刻表」と入力すると、いろいろな時刻表が表紙写真と共に表示される。上から下までざっと目を通してみて、変だな、と思った。2024年3月号が、同じJTBのものでありながら2種類あって、表紙の写真も文字のレイアウトも違う。私が買った方には、確かに1705円と書かれているが、もう片方は1375円だ。
 何が違うのだろう?と思ってよくよく見てみると、私が買った方には、赤字で「デジタル特典付き特別版」と書かれている。思わず、手元の時刻表の表紙をめくると、「限定デジタル特典をGET」と書かれたタグが付いていて、更にそれを開けると、QRコードと引き換えコードなるものが出てくる。アクセスすると「時刻表でたどる北陸本線の歴史」という冊子が読めるらしい。その上、冊子の内容と関係する過去4冊の時刻表の北陸本線関係のページも見られるのだとか。必ずしも一気に500円値上がりしたわけではないのだ。1375円=170円の値上げなら妥当である。
 いらねぇなぁ。私のようにスマホを持たない人間には、QRコードを使ってアクセスするというのが、実質的にできないのである。しかも、過去4冊の時刻表のうち2冊は実物を、1冊は復刻版を持っていて、残りの1冊も、2ヶ月違いで小型版を持っている(多分、内容同じ)。本などというのは、紙でなければ記憶に残らず、後から読み直すのも難しい。
 結局、時刻表を買いに行くのが今日になってしまったのが悪いのだ。余計なおまけが付いていて高いから、売れ残っていたということなのだ。いやぁ、失敗失敗。