春餅(チュンピン)



 本当に珍しく、2週続けて土日家にいた。先々週末に引き続き、先週末も土日ともに来客が多数あって、ひたすら飲んだり食ったりのだらしない時間を過ごしていた。

 昨日は、我が家の下の広場(津波で家がなくなった跡地)に、東京・渋谷の寺崎秀之さんというイタリア料理の高名なシェフが来て、炊き出しをしてくれたので、まずはそこに行った。「炊き出し」というのは今更少し変かもしれない。震災の直後に正真正銘「炊き出し」に来て以降、半年に一度やって来て、地元の人々と交流を続けているのだそうだ(一応、ただに近い有料)。「炊き出し」というより、「移動昼食会」と言った方が正しい。私はこの間、なぜか行ったことがなかったのだが、昨日は人から誘われて、初めてお邪魔した。いやぁ、本当に美味かった。バイキングに近い形式だったが、内容的には高級なフルコースであった。ワインもあって、食が進んだ。デザートのティラミスを、家族4人分いただいて、席に持って帰ったら、家族が満腹で食べられないと言うので、私が1人で食べる羽目になり、苦しい思いをしたのが蛇足であった。歌手やらマジシャンやらも来ていて、わずか数十人の会だったこともあり、なんだかほのぼのと楽しかった。

 午後(イタリア料理の後)は、職場の人たちが集まってきて、花見の第2回。学生時代に、長く相撲部のマネージャーをしていたという女性職員が、「ちゃんこ」を作ってくれた。タマネギとキャベツにニンニクを入れ、塩で味付けをした「塩ちゃんこ」というものらしい。野菜の甘みに、意外なニンニクの取り合わせが絶妙で、これまた美味かった。

 時間は戻るが、来客と言えば、土曜日は友人一家が遊びに来たので、夜はみんなで「春餅(チュンピン)」を作った。我が家は、これまで来客があると、水餃子を作ることが多かった。みんなでわいわい作るのも楽しいし、日本ではほとんど食べることのできないもちもちの水餃子は好評なので、来客と言えば水餃子、となってしまっていたのである。

 ところが、3月末に、某友人宅に夕食に招いてもらい、「春餅」というものを教えてもらった。こう書けば、いかにも初めて「春餅」を知ったみたいだが、それは正しくない。「春餅」というのは北京ダックを包む皮なので、私だって食べたことはあった。しかし、自分で作ってみようと思ったことがなかっただけである。後から、我が家にある中国粉もの料理の本(『ウー・ウェンの北京小麦粉料理』高橋書店、2001年)を見てみると載っていたから、別に作り方がわからなかった、という訳でもない。とにかく、「春餅」作るよ、と言われて、一緒にやってみると、餃子と比べてひどく手軽な上、負けず劣らず美味い。一昨日、夕食は「やっぱり餃子か」となりかけたところで、それを思い出し、復習として作ってみよう、ということになったのである。

 春餅は、餃子に比べると大きいので、同じ小麦粉の量で作る枚数が少なくて済む。しかも2枚重ねて延ばしたり焼いたりするので、作る時の手間も少ない。餃子の具(餡)を作ろうと思えば、大量の野菜をみじん切りすることから始めて、白菜の脱水、味付け・・・と、それなりに面倒だが、春餅は甜麺醤を塗っていろいろなものを各自手巻きすればいいので、具材を切る手間しかかからない。具材も、鴨肉、キュウリ、長ネギが標準だろうが、何を入れても、甜麺醤さえ付ければそれなりの味に仕上がる。何も鴨肉などという高級品を使う必要なんかない。ビールや紹興酒にもぴったりと合う。水餃子は水餃子で美味いが、ちょっと面倒だと思った時には、これからは春餅だな、と思うようになった。

 改めて粉もの料理の本をパラパラと見ていると、自分が作ったことも食べたこともないような、いろいろなものがあるものだ、と感心するとともに、何もかもが美味そうに見える。現状に満足せず、少しレパートリーの拡張に励むか、と不確かな決意をした。

  こんなことばかりやっていると、太るし、ぐうたらになるし、気が抜けてよくないな。さあ、今日からまじめに仕事、仕事・・・。