なぜ大学はタダでなければならないか



(裏面:6月11日朝日新聞「なぜ大学はタダでなければならないか=金銭になじまぬ認識・感情」白石嘉治筆を引用)

 日本の大学(特に国公立)が、他国では考えられないほど金がかかるというのは有名な話。私は、この白石というフランス文学者の高尚なる論とは別に、大学で金がかかるかどうかは、人が大学で学ぶのは誰のためかという問題に直結する点で大切だと思っている。

 日本くらい金がかかると、当然、大学で学ばせてもらったことを社会に還元するという意識が希薄となり、何とかして「元を取ろう」という発想に陥りやすい(私大の医学部で学んだ時のことを考えると分かりやすい。もちろん、私大の医学部を出た人が全てそういう発想で医者をやるわけではないだろうが、私だって、3000万円という学費を投じて医者になり、なったらそのことは忘れてひたすら人のために尽くす、とは絶対にいかない)。日本人が目先の利益に貪欲となり、強い人間ほど貧富の格差をより拡大する方向に動いている(と私には見える)ことの根底に、この問題はある。

 『クレーヴの奥方』を「役に立たない」と切り捨てた大統領が、大きな反感を買うフランスという国は幸せである。日本では小学校から大学まで、多少極端な言い方ではあるが、利益(一高ならさしずめ大学受験)に直結しないことを白眼視する雰囲気がある。時間が経てば経つほど、この差は大きな違いを生むだろう。恐ろしい。